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ウォーターカーテンと空気膜二重構造の併用によるイチゴ促成作型における低温期増収技術

[要約]

ウォーターカーテンを装備した単棟パイプハウスに、空気膜二重構造を組み合わせることにより、ハウス内の気温・地温が高く推移し、イチゴの収穫時期が前進化し、単価の高い3月までの収穫量が増加する。

[キーワード]

空気膜二重構造、ウォーターカーテン、パイプハウス、保温効果、省エネ、イチゴ

[担当]

宮城農園研・情報経営部・園芸栽培部

[代表連絡先]

電話022-383-8114

[区分]

東北農業・基盤技術(野菜花き)

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

井水を利用したウォーターカーテンは、国内において最も導入が進んだ自然エネルギーを利用した暖房設備であり、イチゴの栽培で広く導入されているが、厳寒期には水温や水量の条件によっては、十分な温度が確保されない場合がある。そこで、ウォーターカーテンと空気膜二重構造の組み合わせが、ハウス内の気温、地温などの環境条件とイチゴの生育や収量に及ぼす影響を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. ウォーターカーテンと空気膜二重構造を併用したハウス(図1、以下併用ハウスとする)の気温は対照ハウスより高く推移し、12月下旬〜3月の夜間(18:00〜6:00)のハウス内外気温差8℃以上が確保できる(表1)。
  2. 併用ハウスの12月〜3月の夜間(18:00〜6:00)の地温は、対照ハウスより0.2〜1℃高くなる(表1)。
  3. 併用ハウスの11月〜3月のイチゴ収穫時期は前進化する。同時期のイチゴ収穫量は、1,380kg/3.3a(2006)〜1,280kg/3.3a(2007)となり、対照ハウスより4〜8%程度増加する(図2)。増収分を金額換算した場合13万円〜14万円となる(仙台中央卸売市場H14〜H18月別平均単価)。
  4. 併用ハウスの積算日射量は3〜8MJ/m2・day、対照ハウスは4〜9MJ/m2・dayとなり、併用ハウスでやや低下するが、1月中旬〜3月上旬では2%の低下で差が小さい(図3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 調査実施時期は、2006年11月〜2007年3月、2007年11月〜2008年3月で、調査場所は、宮城県山元町現地圃場である。
  2. 調査を行った圃場のウォーターカーテンは、夜間8℃以下になるとサーモスイッチにより散水を開始する。サーモスイッチは、最も早く施設内気温が低くなる北側のハウス(併用・対照ハウス以外)に設置されており、併用ハウス、対照ハウスとも同時間散水している。
  3. 今回の調査ハウス規模(約3.3a)に空気膜二重構造を付加するための追加費用は、約4.4万円(フィルム代約2万円(併用ハウスフィルム0.1mm+0.075mm、対照ハウスフィルム0.15mmの差額)、ブロワー経費約2.4万円(本体(昭和電気(株)製SF-50、出力40W)価格約2万円、ブロワー電気料(100V、0.8A 約1.9kwh/日)約0.4万円)となる。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
太陽熱を主体とした蓄熱・保温システムの開発と小水力発電の導入調査
予算区分
受託
研究期間
2006〜2007年度
研究担当者
相澤正樹、岩崎泰永、山村真弓、漆山喜信