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畑作物を対象とした機械除草と除草剤施用のハイブリッド除草技術

[要約]

大豆など畑作物条間の中耕と株間・株元への茎葉処理除草剤帯状施用を組み合わせたハイブリッド除草により、慣行の除草方式と同等の抑草効果を維持しつつ、除草剤施用量を50%程度削減できる。

[キーワード]

農業機械、除草剤、ハイブリッド除草、環境負荷低減、大豆

[担当]

東北農研・東北水田輪作研究チーム

[代表連絡先]

電話019-643-3535

[区分]

東北農業・基盤技術(作業技術)、共通基盤・作業技術

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

減農薬栽培への消費者関心の高さや環境負荷低減の観点などから、除草剤施用量の削減技術が求められている。機械除草では株間の除草が十分にできないことも多く、現状では、大規模の栽培を機械除草のみで実施するのは困難である。転換畑大豆作を主な対象として、作物条間の機械除草と株間・株元への茎葉処理除草剤帯状施用を組み合わせることによって、十分な雑草防除効果を持ち、かつ除草剤施用量を低減できる畑作用ハイブリッド除草技術を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. 試作した畑作用ハイブリッド除草機は、乗用管理機に装着した3条中耕ロータリ、電動ポンプ、タンクおよび中耕ロータリに付加した散布ノズルなどからなる(図1表1)。中耕作業と同時に、作物近傍に除草剤薬液を帯状施用する。作業機が跨ぐ作物列に対しては、1条あたり4個の傾斜ノズルにより作物の斜め上方から、および1個の直上ノズルにより作物の真上から、薬液が施用される。作業機の左右端の作物列に対しては2個の傾斜ノズルから施用される。雑草に対しより良く薬液を付着させるため、中耕ロータリカバー前方に設置したノズルと後方のノズルでは噴霧方向が異なる(図1)。
  2. 試作機の薬液散布幅は作物条間の50%であり、作業速度はベースとした乗用管理機+中耕ロータリの慣行作業速度(0.4m/s)に準じている。大豆で一般的な条間75cm の場合には、薬液流量は3L/min 程度となり、所要圧力は0.14MPa であることから、小型の 電動ポンプで十分である(表1)。
  3. 圃場面積あたりの薬液施用量は、作業速度の差異などに起因する変動があるものの、標準散布量(10L/a)に比して平均約50%削減される(表2)。
  4. 大豆作において、ハイブリッド除草作業を1回行った場合と、慣行作業(中耕を1回、その後茎葉処理除草剤全面散布を1回実施)を比較すると、作業3週間後の残草量はハイブリッド除草で多くなるとは言えず、収量についても明確な差はない(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 中耕作業を実施している畑作物圃場において、慣行並みの抑草効果を維持しつつ除草剤施用量を低減することができる。また、慣行作業では別工程で実施する除草剤散布作業の省略による総作業時間の低減も可能となる。
  2. 抑草効果については、岩手県内の大豆圃場において得られた結果である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
難防除雑草バイオタイプのまん延機構の解明及び総合防除技術の開発
予算区分
交付金プロ(総合的雑草管理(IWM))
研究期間
2007〜2009 年度
研究担当者
天羽弘一、中山壮一、西脇健太郎、大谷隆二、澁谷幸憲