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リンゴわい性台樹における薬液到達性の高い樹体構成

[要約]

半密植栽培における薬液到達性の高いリンゴわい性台樹(フリースピンドルブッシュ様樹形)は、(1)樹冠下部(170cm 以下)の骨格となる側枝本数が2〜4本で、(2)側枝発出部の間隔をおよそ20cm 以上あけ、(3)地上高50cm 以上に側枝(結果枝)を配置する樹体構成である。

[キーワード]

リンゴ、わい性台樹、半密植、薬液到達性、樹体構成

[担当]

岩手農研セ・技術部、東北農研・省農薬リンゴ研究チーム

[代表連絡先]

電話0197-68-4420

[区分]

電話0197-68-4420

[分類]

技術・普及

[背景・ねらい]

安心安全な農作物に対する需要が高まり、リンゴ栽培においても交信撹乱剤利用による殺虫剤の削減を図り、農薬の使用成分数を半分以下に抑えた特別栽培農産物の取り組みが進められている。一方、依然として殺虫殺菌剤の散布むらが原因と考えられる病害虫の発生が見られている。散布むらは、枝が混み合うなど薬液が届きにくい樹形が原因の1つとして考えられるため、病害虫防除(薬液散布)を実施する上で、薬液がかかりやすい樹形を検討する必要がある。
そこで、半密植栽培リンゴわい性台樹(フリースピンドルブッシュ様樹形)における薬液到達性と側枝本数、側枝配置との関係を解明し、適正な側枝本数(配置)による樹体構成を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. リンゴわい性台木樹(フリースピンドルブッシュ様樹形)の半密植栽培における薬液到達性の高い側枝本数と側枝配置などの樹体構成は以下のとおりである(図1)。
    1. 樹冠下部(170cm 以下)の骨格となる側枝(直径5cm 以上)を2〜4本とする(図2)。
    2. 側枝発出部の間隔は20cm 程度以上あける(図2)。
    3. 地上高50cm 以上に側枝(結果枝)を配置する(表1)。
  2. リンゴの主要害虫であるナミハダニの防除効果は、薬液付着指数が8以上のリンゴ樹で高い(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本試験で用いたリンゴ樹は、図1のようなフリースピンドル様樹形を基本とし、樹冠下部(170cm 以下)の骨格となる側枝本数を2、4、6本(樹冠上部の側枝本数は5〜7本)、対照区は樹冠上部・下部で15 本としたものを供試した。品種は「ふじ」(平成9年定植)、植栽距離は5×5mとした。
  2. 薬液到達性の調査には感水紙を利用した。樹冠内部5ヶ所(主幹部1ヶ所及び主幹を中心とした半径1mの位置4ヶ所)に支柱を立て、各支柱の0.5、1.5、2.5m の高さに感水紙を水平(上下)方向と垂直(東西)方向の4方向に設置し、1樹あたり60 枚とした。薬液到達性調査樹に、慣行コーンノズルを装着したスピードスプレーヤを用い散布量450L/10a・送風量470立方メートル/min・散布圧力1.5Mpa の条件で水を噴霧し、感水紙への液滴付着程度を調査した。感水紙の付着程度は標準付着度表(カンキツ用)を利用し、0(付着なし)〜10(被覆面積率100)までの指数で評価し、感水紙60 枚の平均値で示した。調査は8 月上旬に実施した。
  3. 側枝本数を2〜4本とした場合、10a あたり収量は少なくなるが、剪定、摘果、着色管理、収穫の作業時間が減少するため、労働生産性が向上する(データ省略)。
  4. 薬液到達性の高い樹形をつくるため側枝の剪除が必要となるが、一挙に側枝本数を減らすと、樹勢のバランスを崩すため、主幹や側枝の太さなどを考慮し、2〜3年かけて剪除する。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
東北地域における農薬50%削減リンゴ栽培技術体系の確立
予算区分
交付金プロ(農薬削減リンゴ)
研究期間
2005〜2009 年度
研究担当者
小野浩司、田村博明、高梨祐明(東北農研)