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リンゴ・セイヨウナシ樹種複合園における6月〜9月の共通防除体系の殺虫剤選択と防除効果
[要約]
リンゴ・セイヨウナシの樹種複合園において、6月〜9月まで両樹種の共通害虫であるシンクイムシ類とハマキムシ類を対象に殺虫剤を共通化した防除を行うことにより、単独防除と同程度の防除効果を得ることができる。
[キーワード]
樹種複合、リンゴ、セイヨウナシ、共通防除、殺虫剤
[担当]
山形農総研セ・園試・園芸環境研究科、東北農研・省農薬リンゴ研究チーム
[代表連絡先]
電話0237-84-4125
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
技術・参考
[背景・ねらい]
リンゴ・セイヨウナシの共通防除において、発生する主要害虫がほぼ一致することから、共通防除体系の構築のためには病害防除が鍵となる。そのため、病害防除で共通防除が可能と考えられる6月〜9月までを共通防除期間とし、主要害虫であるシンクイムシ類とハマキムシ類を防除対象として、効率的な殺虫剤の選択等、共通防除技術の開発を行い、防除効果を検討する。
[成果の内容・特徴]
- リンゴ・セイヨウナシに発生する主要害虫はシンクイムシ類とハマキムシ類であり、それぞれ発生時期が重なる6月〜9月まで殺虫剤を共通化した防除ができる。
- ナシヒメシンクイの第一、第二、第三世代成虫の発生盛期は6月中下旬、7月下旬、8月下旬になる。また、モモシンクイガの越冬世代成虫および第一世代成虫の発生盛期は6月下旬、8月中下旬となる。リンゴコカクモンハマキの越冬世代、第一世代、第二世代成虫の発生盛期は、6月下旬、8月中下旬、9月中旬である(図1)。
- 6月〜9月の共通防除期間において、シンクイムシ類に対し使用する剤として、防除効果が高く、残効性の長い合成ピレスロイド剤を6月中下旬と8月下旬に使用する。この時期の防除はハマキムシ類に対しても効果的である(表1、表2)。7月の防除はシンクイムシ類に対し防除効果のあるネオニコチノイド剤、有機リン剤、ジアミド剤の中から選択する。ジアミド剤は幼虫による食毒で死亡するため、成虫発生盛期の10日後頃に散布する。
- 合成ピレスロイド剤は残効性が長いため、リンゴ・セイヨウナシ共通防除殺菌剤との組み合わせでは、同様に残効性の長いストロビルリン系剤を選択することにより防除間隔を開け、効率的な防除を行うことができる(表2)。
- リンゴ・セイヨウナシ共通防除実施により、両樹種主要害虫による被害は少なく、単独防除と同程度の防除効果を得られる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は、山形県天童市内のリンゴ「早生ふじ」、「さんさ」、「つがる」、セイヨウナシ「ラ・フランス」樹種複合の交信攪乱剤未使用園で2007 年〜2009 年に実証試験を行った結果に基づく。
- 本成果情報は、ハマキムシ類の密度が高く、シンクイムシ類の密度は低い地域で行った結果である。
- 薬剤選択にあたっては、各薬剤の使用基準を厳守する。特に8月以降は、両樹種ともに早生品種の収穫時期にあたることから収穫期を考慮した薬剤選択を行う。
- 突発的な害虫の発生や、リンゴ・セイヨウナシそれぞれにのみ発生する害虫が増加した場合には、共通防除とは別に追加防除を行う。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- 東北地域における農薬50%削減リンゴ栽培技術体系の確立
- 予算区分
- 交付金プロ(農薬削減リンゴ)
- 研究期間
- 2005〜2009 年度
- 研究担当者
- 山田広市朗、本田浩央、高橋和博、高部真典、今野俊子、高梨祐明(東北農研)