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スモモヒメシンクイは岩手県盛岡地域では8月下旬以降にリンゴに産卵する
[要約]
スモモヒメシンクイは岩手県盛岡地域では年3回の発生で、越冬世代、第1世代、第2世代成虫の発生時期はそれぞれ5月中旬〜6上旬、7月中下旬、8月下旬〜9月中旬である。越冬世代、第1世代成虫はスモモに産卵するが、第2世代成虫は主にリンゴに産卵する。
[キーワード]
スモモヒメシンクイ、発生時期、フェロモントラップ、リンゴ、スモモ
[担当]
果樹研・省農薬リンゴ研究果樹サブチーム
[代表連絡先]
電話019-645-6157
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
技術・参考
[背景・ねらい]
スモモヒメシンクイは1988 年に山梨県でスモモ害虫として問題化し、2003 年には長野県でリンゴ果実の被害が確認された。これらの地域では、時期別の寄主植物やリンゴに対する加害時期について解明されているが、東北地方におけるそれらの情報は得られていない。そこで、岩手県盛岡地域におけるスモモヒメシンクイの発生生態をリンゴ園とスモモ樹に設置したフェロモントラップを利用して調べるとともに、野外で採集した被害果からの羽化調査により、スモモとリンゴに対する産卵時期を推定し、リンゴを加害する世代と産卵時期を明らかにした。
[成果の内容・特徴]
- フェロモントラップによる3年間の調査から、スモモヒメシンクイは年3回の発生で、越冬世代成虫は5月中旬〜6上旬、第1世代成虫は7月中下旬、第2世代成虫は8月下旬〜9月中旬にかけて誘殺されることが明らかになった(図1)。
- スモモおよび「ふじ」、「さんさ」などのリンゴ果実を無防除の園地で定期的に採集し、加害虫が産卵された時期と羽化する時期を発育零点、有効積算温度と気温から推測した。スモモ加害虫の羽化推測時期は第1、2世代成虫誘殺時期とほぼ一致し(図2)、越冬世代、第1世代成虫はスモモに産卵するがリンゴには産卵しないこと、また第2世代成虫はスモモに対する産卵が少なくリンゴに産卵することが明らかになった(図3)。
- スモモヒメシンクイの第2世代成虫誘殺時期とリンゴにおける産卵推測時期はほぼ一致することが明らかになった(図1、4)。
[成果の活用面・留意点]
- スモモヒメシンクイの被害が発生する地域ではフェロモントラップを利用することでリンゴにおける産卵時期が把握できる。
- リンゴにおいて防除を実施する場合、第2世代成虫が飛来する8月下旬以降になるが、早生リンゴの収穫時期と重なるので、使用する薬剤の収穫前日数に注意が必要である。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- フェロモン利用等を基幹とした農薬を50%削減するリンゴ栽培技術の開発
- 予算区分
- 交付金プロ(農薬削減リンゴ)
- 研究期間
- 2006〜2008 年度
- 研究担当者
- 新井朋徳、高梨祐明、井原史雄、柳沼勝彦、豊島真吾
- 発表論文等
- 1)新井朋徳ら(2009)北日本病害虫研究会報.60:238-244.
- 2)新井朋徳ら(2009)北日本病害虫研究会報.60:245-252.