研究所トップ研究成果情報平成21年度

薬液到達性を向上させるためのモモの樹形改良と新梢管理

[要約]

モモの樹形について、主枝の開張度を大きくして低樹高化すると、スピードスプレーヤによる薬液到達性が向上する。また、薬液到達性は、枝葉の繁茂条件により影響を受けることから、繁茂に応じて散布量の調節や夏季せん定等の新梢管理を行う。

[キーワード]

モモ、樹形改良、新梢管理、薬液到達性、樹冠視認度

[担当]

福島農総セ果樹研・栽培科栽培担当

[代表連絡先]

電話024-542-4951

[区分]

東北農業

[分類]

技術・普及

[背景・ねらい]

近年、モモの病害虫防除は、スピードスプレーヤ(以下、SS)を利用した農薬散布が一般的であるが、ドリフト軽減や散布量の削減など、安全で効率的な防除技術の開発が求められている。そこで、モモ栽培における病害虫防除の効率化を目的に、薬液到達性の優れる樹形や主枝の構成を検討するとともに、枝葉の繁茂条件と薬液到達性との関係を解析し、薬液到達性を向上させるための樹体管理技術について明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 改良樹形は、主枝2本に、亜主枝8本を形成し、支柱や添え竹の利用により、主枝および亜主枝を水平に対し30 度程度に開張させ、低樹高に整枝した樹形とする(図1)。
  2. 薬液到達性は、慣行樹形、改良樹形ともに、SSの通路側に比べて樹列付近ほど、幹に近い位置ほど、さらに高い位置ほど劣る。特に、主幹上部の高さ4m付近は、薬液到達性が劣りやすい(図2)。
  3. 主枝を開張させて樹高を低く抑え、薬液到達性が劣る主幹上部に側枝を配置しない改良樹形の薬液到達性は、いずれの散布条件でも慣行樹形に比較して同等もしくは優れる(図3)。
  4. 枝葉の繁茂が少ない(樹冠視認度が高い)ほど、薬剤到達性は高い傾向がある。繁茂が少ない場合は散布量を削減しても十分な到達性が得られるが、繁茂が多い場合は散布量を標準散布量まで多くするか、夏季せん定等の新梢管理により枝葉の繁茂を改善する(図4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 薬液到達性は、主幹から列方向に0.5m、1.5m、さらに列から通路方向に1.5m、3.0m離れた位置に高さ別に感水紙(Spraying Systems 社)を設置し、SSで散水して調査する。感水紙はカンキツ用標準付着度表(0:付着無し〜 10:全面付着)により評価する(図2)。
  2. 樹冠視認度は、幅1m、長さ2mの判定板を、地上1.5 〜 3.5 mの高さの樹冠中央に4カ所設置し、その表裏について、SSの通路位置から樹冠に向かって斜め下方から写真撮影し、赤丸の見え方で判定する(図4)。
  3. 薬液到達性と樹冠視認度は、7m×7m千鳥植え(SSの散布幅7m)のモモ樹で解析している(図4)。
  4. 改良樹形は、主枝の開張度が大きいため、徒長枝の発生が多い傾向があるので、夏季せん定や摘心など、新梢管理が遅れないように注意する。
  5. 薬液到達性は、風等気象条件をはじめ、散布対象樹の大きさ、使用するSSの散布風量およびノズルの種類によって変動する。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
東北地域における農薬50 %削減リンゴ栽培技術体系の確立
予算区分
交付金プロ(農薬削減リンゴ)
研究期間
2005 〜 2009 年度
研究担当者
志村浩雄、永山宏一、菅野英二、藤田剛輝、三瓶尚子、額田光彦、佐久間宣昭、畠良七、佐々木正剛、穴澤拓未、尾形正、安部充