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クロフサスグリの枝幹害虫スグリコスカシバの本州での初発生

[要約]

青森県八戸市南郷区及び青森市高田のクロフサスグリの園地において、北海道に 次いで二例目、本州で初となるスグリコスカシバ(Synanthedon tipuliformis)の被害が確認 された。本種は五戸町でも認められ、県内に広く生息している可能性が高い。

[キーワード]

クロフサスグリ、穿孔性害虫、スグリコスカシバ

[担当]

青森産技セ・りんご研・県南果樹部

[代表連絡先]

電話0178-62-4111

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

青森県青森市では30 年ほど前からクロフサスグリ(Ribes nigrum)が栽培されており、今日では国内生産量の90 %を占める日本一の産地になっている。別名カシスとも呼ばれるクロフサスグリは、ポリフェノール含量の高い機能性食品の素材として注目されるようになり、それに伴って他の市町村でも栽培されるようになってきた。このような中で、その枝を穿孔加害する未知の害虫被害が発生した。被害枝は園内に広くみられ、折れやすく、葉や果実も小さくなる等の影響がみられるので、その原因を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 2008 〜 2009 年5 月、八戸市南郷区中野のクロフサスグリにおいて、枝の内部に侵入して主に随部を食害する害虫被害が認められる。虫糞や蛹殻が付着した被害枝も数多く観察され、萎凋した枝もみられる(図1)。
  2. 被害枝から採取した幼虫を25度C、15L・9D の条件で飼育した結果、18 日後にスカシバガ科に属する成虫が得られている(図2)。本種は名城大学の有田豊教授により、スグリコスカシバSynanthedon tipuliformis と同定される。
  3. 2009 年5 〜 6 月、八戸市南郷区中野、青森市高田及び五戸町扇田のクロフサスグリにおいて、園内を飛翔するスグリコスカシバの成虫が確認されている(図3表1)。
  4. 県内で最も古い栽培歴を有する青森市高田の園地では被害株率が73.9 %である(表1)。
  5. 本種の発生確認は北海道に次いで二例目、本州では初めてである。

[成果の活用面・留意点]

  1. 日本での本種の報告は、岩崎・有田(北海道からのフサスグリの外来種スカシバガ(スカシバガ科)の発見.蝶と蛾、59(1):45-48.2008)が初めてである。
  2. 本種は昼行性であり、青森県では5月末〜6月初め頃から園内を飛翔する成虫を観察できる。
  3. 本種は年1 回の発生であるので、被害を確認した場合には成虫の羽化前の5月半ばまでに被害枝や剪定枝を園外に運び出して処分する。
  4. 本種の防除に有効な登録農薬はないので、被害枝の処分を徹底する。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
特産果樹病害虫の発生動向に応じた新防除技術の開発
予算区分
県交付金
研究期間
2008 〜 2009 年度
研究担当者
村井智子、成田治、雪田金助