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セイヨウナシ樹における薬液付着指数および樹冠視認度と病害虫発生の関係
[要約]
セイヨウナシの主要病害虫である輪紋病およびシンクイムシ類に対しては、薬液付着指数が高いほど防除効果が高く、輪紋病では9 以上、シンクイムシ類では8 以上確保されていると高い防除効果が期待できる。樹冠視認度が2 以上の場合は散布液量を削減しても輪紋病に対する防除効果が高い。
[キーワード]
セイヨウナシ、薬液付着指数、樹冠視認度、薬液到達性
[担当]
山形農総研セ・園試・果樹研究科、東北農研・省農薬リンゴ研究チーム
[代表連絡先]
電話 0237-84-4125
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
技術・参考
[背景・ねらい]
近年の果実生産では、消費者の安全安心指向への対応などから、農薬を効率的に散布し、化学農薬の使用量を削減することが望まれている。そこで、薬液付着指数および樹冠視認度と病害虫発生の関係を明らかにし、セイヨウナシ樹における農薬の散布量削減防除体系の確立に資する。
[成果の内容・特徴]
- 薬液付着指数が高いほど、輪紋病およびシンクイムシ類に対する防除効果が高い(図1および図2)。なお、薬液付着指数が9 以上確保されている場合は、輪紋病の発病が多い年でも発病果率を5%程度に抑えている(図1)。薬液付着指数が8 以上確保している場合は、シンクイムシ類による被害果発生が多い年でも発生率を2%程度に抑えている(図2)。
- 樹冠視認度が低いほど、散布液量の違いが薬液付着指数に及ぼす影響が大きい。また、樹冠視認度が2 以上確保されている場合は、散布液量を300L/10a に削減しても慣行の500L/10a と同等の高い薬液付着指数(9 以上)が期待できる(図3)。
- 樹冠視認度が2 以上確保されている場合は、慣行の500L/10a から300L/10a に散布液量を削減しても、輪紋病の発病が多い年でも追熟後の発病果率を5%程度に抑えている(図4)。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は、散布量削減の可能性を判断する場合の資料として活用できる。
- 本成果は、場内の「ラ・フランス」樹(樹齢21 年生(2009 年)、栽植距離8×8m、開心形仕立て、樹高5m 前後、樹幅8m前後)を用いた試験結果である。また、農薬散布は場内慣行防除暦とし、2008 年はナシヒメシンクイによる被害果の発生が多く、2009 年は輪紋病の発病果が多い年の試験結果である。
- 薬液付着指数は、樹を高さ(1、2、3m)で3区分および主幹から樹列方向の距離(1.5m間隔)で5区分の15 ブロックに分割し、地表面に対し平行(上下)および垂直(前後)の4 点調査できるよう感水紙(Spraying Systems 社、商品名「TeeJet」、26mm×38mm)を各ブロックの中央に設置し、水道水をSS(共立社SSV1088FSC、風量860立方メートル、圧力1.5MPa、コーンノズル使用)で散布し調査した。なお、付着指数は、カンキツ用の標準付着表(0:付着なし〜10:全面付着)より求めた。
- 本成果で用いた樹冠視認度調査法は、(独)果樹研究所で開発したわい性台リンゴ樹における「葉群密度判定値」の調査法を改良したもので、平成20 年度成果情報「セイヨウナシ樹における樹冠視認度を利用した薬液到達性の評価法」を参照する。また、本成果の樹冠視認度は、評点の合計値ではなく平均値を使用し、0:視認性不良〜4:視認性良の5段階で指数化している。
- 薬液の到達性は、散布液量や使用するSS の散布風量および散布対象樹の大きさ等によって変動する場合がある。
- 樹冠視認度と薬液到達性および病害虫発生の関係は、6 月上旬から8 月上旬まで同じ傾向にある。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- 東北地域における農薬50%削減リンゴ栽培技術体系の確立
- 予算区分
- 交付金プロ(農薬削減リンゴ)
- 研究期間
- 2005〜2009 年度
- 研究担当者
- 高橋和博、本田浩央、高梨祐明(東北農研)