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ナシの害虫、ナシシンクイタマバエの発生生態と防除法

[要約]

成虫の発生時期は越冬世代が5月中旬〜6月上旬、第1世代が6月下旬〜7月上 旬であり、年間の発生回数は5〜6回と推定される。防除法は、老熟幼虫がナシの粗皮隙 間や割れ目などに繭を作り越冬するため、休眠期の粗皮削りが効果的である。

[キーワード]

ナシシンクイタマバエ、発生生態、防除法

[担当]

福島農総セ・果樹研・病害虫科

[代表連絡先]

電話024-542-4199

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

2006 年8月に、ナシの果芯部に寄生し食害するタマバエ類の幼虫が、ナシシンクイタマバエResseliella sp.であることが判明している。これまで本種に関する文献が少なく、その生態は不明な点が多いため、本種の生態を解明し、その防除法について検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 成虫は翅長2mm程度の大きさである。産卵部位は主に果実のていあ部(尻部)であるが、樹皮の裂け目にも卵が確認できる。老熟幼虫は鮮赤色で、2〜3mm程度の大きさであり、果実や樹皮下、新梢などにも寄生する。幼虫は繭を作ってその中で蛹化する。蛹は果実のていあ部や樹皮下、樹冠下の土壌中に認められる(図1)。
  2. 本種に寄生された果実は症状が進むにつれ、心腐れ症を呈し、ていあ部から茶色の汁が流れ出る場合があるが、「幸水」では外観から被害果を判別できない場合もある(図1)。被害は「幸水」と「新高」に集中し、「豊水」での被害は極めて少ない。
  3. 老熟幼虫がナシの粗皮隙間や割れ目などに簡単な繭を作り越冬する。成虫の発生時期は越冬世代が5月中旬〜6月上旬、第1世代が6月下旬〜7月上旬である。その後は世代が重なり発生時期は特定できないが、最終世代の発生は9月下旬〜 10 月上旬と考えられることから、年間の発生回数は5〜6回と推定される(表1)。
  4. 防除については、休眠期(3月)の粗皮削りが効果的である(表2)。また、被害果と被害枝を適切に処分する。
  5. 本種の発生地では地区の慣行防除体系において、5月中旬〜6月上旬にハマキムシ類やアブラムシ類の防除を1〜2回実施することで、同時に本種の第1世代幼虫による果実被害が抑制される。また、6月下旬〜7月上旬にシンクイムシ類の慣行防除を実施することで、同時に第2世代幼虫による果実被害も抑制される。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本種の形態や被害症状は他のナシ害虫と異なるため、本種の診断が可能である。
  2. 粗皮削りを実施する場合は、主幹と主枝の分岐部、主枝と亜主枝の分岐部、亜主枝と側枝の分岐部周辺の粗皮を削る。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
ナシシンクイタマバエの発生生態および防除法確立試験
予算区分
県単
研究期間
2005 〜 2009 年度
研究担当者
佐々木正剛、荒川昭弘、穴澤拓未
発表論文等
1)荒川ら(2006)北日本病虫研報、57:236
2)佐々木ら(2007)応動昆講演要旨、125