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光学異性体分離カラムによるカテキン及びエピカテキンの光学分割法
[要約]
カテキン及びエピカテキンの光学異性体である(+)体と(-)体は、固定相としてアミロース誘導体であるAmylose tris(3,5-dimethylphenylcarbamate)をシリカゲルに化学結合した光学異性体分離用HPLC カラムを用い、順相条件でそれぞれ相互に分離が可能である。
[キーワード]
カテキン、エピカテキン、光学分割、順相HPLC
[担当]
東北農研・寒冷地特産作物研究チーム
[代表連絡先]
電話019-643-3513
[区分]
東北農業・流通加工
[分類]
研究・普及
[背景・ねらい]
光学活性を有する化合物は、異性体間で活性が異なるなど性質を大きく異にする場合が存在するため、光学異性体分割法の重要性は急速に増している。様々な作物や食品に含まれるカテキン及びエピカテキンにも、それぞれ光学異性体の関係にある(+)体(右旋性)と(-)体(左旋性)が存在し、生体利用性が異なることが報告されている。また、加工(焙煎処理)により(+)-カテキンが(-)-カテキンに変化することが明らかにされており、カテキン類の光学分割法開発は特性解明にも重要と考えられる。キャピラリー電気泳動や光学異性体カラムを用いた逆相HPLC(高速液体クロマトグラフィー)によるカテキン類の光学分割が報告されているが、ピークの分離が不十分、分析に長時間を要するなど改善が必要である。そこで本研究では、カテキン・エピカテキンの光学異性体を迅速に分割する分析手法を開発する。
[成果の内容・特徴]
- カテキン及びエピカテキンそれぞれの(+)体と(-)体(標準品)混合溶液を、固定相として、アミロース誘導体であるAmylose tris(3,5-dimethylphenylcarbamate)をシリカゲルに化学結合した光学異性体分離用カラム(図1)を接続したHPLC により順相条件で分析すると、カテキンはヘキサン:エタノール=8:2(0.5%トリフルオロ酢酸)、カラム温度40度C、流量1 mL/min、検出280 nm の条件、エピカテキンはヘキサン:エタノール=5:5(0.5%トリフルオロ酢酸)、カラム温度40度C、流量1mL/min、検出280 nmの条件でエピカテキンは10 分、分析時間の長いカテキンでも極めて良好に20 分以内で(+)体と(-)体のピークを分離する事が可能である(図2A,B)。
- ソバ種実のカテキン類は主要なポリフェノール化合物であるが、(+)体または(-)体の確認がされていないことから単離し光学分割条件により分析すると、 カテキン及びカテキン配糖体(カテキン7-O-グルコシド)のアグリコンは(+)体である(図3A)。
- 同じく、ソバ種実から単離したエピカテキン類を光学分割条件により分析すると、エピカテキン及びエピカテキンエステル化物(エピカテキン3-O-(3,4-di-O-メチル)ガレート)のアグリコンは(-)体である(図3B)。
[成果の活用面・留意点]
- 作物に含まれるカテキン類の(+)体と(-)体の判別、加工による変化の解明等に利用可能。
- カテキン類の(+)体と(-)体(標準品)混合溶液を一般的なポリフェノール分析法である逆相HPLC(ODS カラム)で分析した場合には、(+)体と(-)体は分離しない。
- 本研究ではカテキン類の配糖体やエステル化物から、酸分解または酵素処理によりアグリコンを調製し光学異性体分離カラムで分析している。従って配糖体やエステル化物そのものの分析については、別途分析条件や同定に関し検討が必要。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- 寒冷地における地域特産作物の優良品種の育成及び利用技術の開発
- 予算区分
- 委託プロ(食品)
- 研究期間
- 2006〜2009 年度
- 研究担当者
- 渡辺満
- 発表論文等
- Watanabe, M. and Ayugase, J (2009). J. Agric. Food Chem. 57:6438-6442