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大粒で多収の掛米用水稲新品種「山形100号」の育成
[要約]
「山形100号」は“中生の晩”の粳種で、玄米千粒重が「はえぬき」より1 割程度重く、大粒で多収であり、穂いもち圃場抵抗性が“極強”である。掛米用として酒造適性に優れ、雑味が無くすっきりと淡麗な酒ができる。
[キーワード]
イネ、山形100号、大粒、多収、掛米、酒造適性
[担当]
山形農総研セ・水田農試・水稲研究科
[代表連絡先]
電話0235-64-2100
[区分]
東北農業・作物(稲育種)
[分類]
技術・普及
[背景・ねらい]
“米どころやまがた”として米の主産地の地位を高めていくため、多様化、高度化する生産者・実需者・消費者ニーズを先取りした独自性の高い品種の開発が必要である。酒米においても、地域に適応し、酒造適性が優れている品種が求められている。そこで、掛米用の酒造適性に優れた多収品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 「山形100号」は、いもち病抵抗性が強い良質品種の育成を目標に、「山形75号」を母、「奥羽366号(後の「ちゅらひかり」)」を父として1999 年に人工交配を行い、その後代から育成した品種である。
- 出穂期、成熟期とも「はえぬき」並で、育成地では“中生の晩”に属する粳種である(表1)。
- 稈長は「ひとめぼれ」並の“中稈”で、穂長および穂数も並である。草型は“中間型”で、耐倒伏性は「ひとめぼれ」より強い“中”である(表1)。穎色は“黄白”、ふ先色は“白”である。
- いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia,Pii”と推定され、圃場抵抗性は、葉いもちが“やや強”で、穂いもちが“極強”である。障害型耐冷性は“強”、穂発芽性は“やや易”である(表1)。
- 玄米千粒重は「はえぬき」より1 割程度大きく、大粒で、収量性は1 割以上高い。外観品質は、腹白粒および心白粒が発生しやすく、「はえぬき」に比べやや劣る(表1)。
- 胴割れ検定の結果では、胴割れしにくい「ひとめぼれ」並で、「雪化粧」よりも明らかに割れにくい(図1)。
- 山形県工業技術センターにおける試験醸造の官能評価では、雑味がなくすっきりと淡麗な酒質となり、甘口・辛口など様々なタイプの酒に対応でき、掛米用として酒造適性に優れる。
[成果の活用面・留意点]
- 適応地帯は、山形県平坦〜中山間地域で、普及面積は、500ha が見込まれる。
- 耐倒伏性が「中」であること、また低タンパク質米を生産するため、倒伏を招くような多肥栽培を避ける。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- 第IV期水稲主力品種の育成“おらがやまがた”地域特産型水稲品種(ABC品種)の育成
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 1999〜2009 年度
- 研究担当者
- 齋藤信弥、結城和博、佐野智義、森谷真紀子、佐藤久実、中場勝、櫻田博、本間猛俊、渡部幸一郎、水戸部昌樹、宮野斉、中場理恵子、後藤元、齋藤久美
- 発表論文等
- 齋藤ら(2009)東北農業研究62:11-12