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水稲直播栽培に利用できる高速点播機構

[要約]

高速点播機構は、エアダクト、播種ロール、ロールカバーの3 層で形成する播種ユニットと送風用ファンで構成し、作業速度1.2m/s で栽植密度19.2株/平方メートル(条間30.0cm、株間17.4cm)、縦方向6cm、横方向2cmの形状に点播できる。

[キーワード]

水稲、直播、点播、播種ユニット

[担当]

秋田農技セ農試・担い手プロジェクトチーム

[代表連絡先]

電話 018-881-3330

[区分]

東北農業・基盤技術(作業技術)

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

水稲直播栽培では、大区画ほ場に対応した低コスト省力化技術の確立が求められている。現在、水稲直播栽培は、土中条播が主流であるが、耐倒伏性や登熟に優れる点播についての要望も高い。しかし、点播は作業速度が増加することで株形状を維持できなくなるため、作業速度を土中条播と同等にすることが困難な現状にあり、現地での普及が進んでいない。本報は、点播直播での作業能率改善を目的に、作業速度1.0m/s以上の条件で株形成が可能な高速点播機構を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. 高速点播機構は、エアを供給するエアダクトを第1層、その外側を回転し種子の供給と排出を行う播種ロールを第2 層、それらを支持・固定する第3 層のロールカバーで形成する播種ユニットと送風用ファンで構成される。なお、エアダクトにはエア排出口、ロールカバーには種子供給口と排出口をそれぞれ設けている(図1)。
  2. 播種ロールは、表面に種子搬送溝(長辺30mm、短辺10mm、深さ9mm)と送風用のピンホール(直径3 o:17 穴)を4 セット配置し、覆土用接地輪や直流モータを動力に回転する。送風用ピンホールは、エアダクトのエア排出口との交差時にエアダクト内に貯留するエアを吐出する(図1図2)。
  3. 種子は、種子ホッパから播種ロールの種子搬送溝に供給され、ロールカバー下部の種子排出口まで移動して落下する。落下する種子は、送風用ピンホールが吐出するエアで加速されて一群となり、エアが無い状態よりも速い速度で株状に播種される(図2図3)。
  4. 高速点播機構を組み込んだ乾田直播機は、乾籾を作業速度1.2m/s で、栽植密度が19.2 株/平方メートル(条間30.0cm、株間17.4cm)、縦方向で6cm、横方向で2cm の形状に点播できる(表1図3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 高速点播機構は、送風用ファンと直流モータを駆動するため、直流12Vの電源が必要である。
  2. 播種ロール回転数は、覆土用接地輪や電動モータに付属するスプロケットと播種ロールのスプロケットを組み合わせて調整する。
  3. 株間の設定は、播種ロールの回転数を調整して行う。播種量は、種子ホッパ下部の横溝ロール開度を変更して1株あたり8〜43粒程度に調整できる。
  4. 高速点播機構は、市販の湛水直播機にも搭載できる。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
イネ無代かき直播とダイズ無培土栽培技術の確立と実証
予算区分
受託(担い手プロ)
研究期間
2008〜2009年度
研究担当者
進藤勇人、片平光彦(山形大)、松波寿典、佐藤健介、高山真幸、佐藤雄幸、田村保男
発表論文等
1)若松一幸、片平光彦「直播用高速点播機構」特開2008-289366