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寒冷地水稲の長期無カリ栽培における収量変動及び堆肥施用効果
[要約]
寒冷地における水稲の長期無カリ栽培は穂数減少と登熟歩合低下により減収する。堆肥施用は減収を抑え、カリ吸収を補うことから減肥の可能性を高めるが、作土層へのカリ蓄積効果は小さい。堆肥施用による土壌カリ含量への影響は下層への蓄積により認められる。
[キーワード]
寒冷地水稲、三要素試験、無カリ栽培、堆肥
[担当]
青森農林総研・土づくり研究部
[代表連絡先]
電話0172-52-4391
[区分]
東北農業・基盤技術(土壌肥料)
[分類]
研究・参考
[背景・ねらい]
肥料価格の高騰及び低投入型農業の推進により、土壌診断や堆肥成分量を考慮したりん酸、カリの減肥技術の確立が求められている。今回、寒冷地水稲栽培で77 年間(1930 〜 2006 年)継続した肥料三要素試験の結果から、無カリ栽培における収量変動及び堆肥の養分動態に与える影響を解析し、カリ減肥技術開発の参考とする。
[成果の内容・特徴]
- 1930 年〜 1965 年の無カリ栽培の収量比は、無堆肥が三要素区比98、堆肥施用が堆肥・三要素区比100、1966 年〜 2006 年の無カリ栽培の収量比は、無堆肥が三要素区比96、堆肥施用が堆肥・三要素区比99 であり、堆肥施用によりカリ欠如の影響が小さくなる(表1)。
- 1966 年〜 2006 年の無カリ区の三要素区に対する減収年において、5〜 10 %減収年の収量構成要素は、三要素区比で穂数が96、登熟歩合が97 に低下し、10%以上の減収年では、穂数が93、登熟歩合が96 に低下する。また、堆肥・無カリ区の5〜 10%減収年では、堆肥・三要素区比で穂数が94 に低下する(表1)。
- 1981 〜 2006 年の成熟期のカリ吸収量は、三要素区と堆肥・無カリ区でほぼ同等であり、堆肥により慣行施肥並のカリ供給が認められる(図1)。
- 2006 年の作土層の交換性カリ含量は、1996 年の低下した状態から変化が小さく、施肥及び堆肥によるカリの作土層への蓄積効果は比較的小さい(表2)。
- 2006 年の交換性カリ含量は、作土層では無カリ区及び堆肥無カリ区で三要素施用栽培より低く、また、下層では堆肥・無カリ区及び堆肥・三要素区で堆肥無施用栽培に比べて高い傾向にあった(表2)。
- 2006 年の全カリ含量は、作土では無カリ区及び堆肥・無カリ区の無カリ栽培で低く、作土からのカリ収奪が認められる。また、堆肥・無カリ区及び堆肥・三要素区の堆肥施用栽培では、下層の全カリ含量が高く、下層へのカリの蓄積が認められる(図2)。
[成果の活用面・留意点]
- カリ減肥の影響を解析する際の参考となる。
- 堆肥は稲わら堆肥N=0.41,P2O5=0.24,:K2O=0.49(現物%)(2000 〜 2006 年平均)を1t/10a施用、稲わらは無施用。肥料は、硫安、過りん酸石灰、塩化カリを施用した結果である。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- 水稲の肥料三要素試験
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 1930 〜 2006 年度
- 研究担当者
- 藤澤春樹、清藤文仁、境谷栄二、岩谷香緒里