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根域冷却処理と培養液の高濃度管理による夏秋トマトの糖度向上技術

[要約]

夏秋トマトの湛液水耕栽培において、根域冷却中の培養濃度を慣行の2倍濃度で管 理することで、慣行の栽培法より果実糖度は平均1.5%上昇し、7月と9月以降の糖度向上 効果が高くなる。

[キーワード]

根域冷却、糖度、培養液濃度

[担当]

岩手農研・技術部・南部園芸研究室

[代表連絡先]

電話0192-55-3733

[区分]

東北農業・野菜花き(野菜)

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

(独)農研機構東北農業研究センターから、トマトの根域を12度C以下に冷却することで果実品質が向上するとの知見が報告されている。東北の中山間地域には冷涼な湧水、地下水等が存在することから、天然の冷水資源の活用を前提とした根域冷却処理によるトマトの糖度向上技術を確立する。
これまでに、栽培方式を湛液水耕とすることが冷却効率や糖度向上に有効であること、冷却時間は全日処理とすることが必要であることを明らかにした。しかし、根域への低温ストレスは草勢低下の影響が大きく、果実糖度を高く維持することが難しいことから、培養液の高濃度管理による果実糖度の向上効果について検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 根域冷却処理による果実糖度は、培養液を標準濃度管理とするよりも2倍濃度管理とすることで高くなる。慣行栽培法(常温−標準区)に比べ、根域冷却処理と2倍濃度管理を組合せた場合の果実糖度は、糖度向上効果の高い「桃太郎はるか」では1.9%、効果の低い「桃太郎8」「桃太郎サニー」では1.2%向上し、平均1.5%向上する(表1図1)。
  2. 2倍濃度管理とした場合の果実糖度は、標準濃度管理よりも高く推移するが、6〜8 段花房の果実糖度は夏期高温の影響により低下し、標準濃度管理と同程度になる(図2)。
  3. 根域冷却処理の標準濃度管理では6〜7 段、11〜12 段花房の上位葉で葉色が低下し草勢は弱まるが、2倍濃度管理ではこのような症状は発生せず、草勢は維持される。また、開花の促進、初期の生育量が増加するなど生育促進効果が認められる(データ略)。
  4. 標準濃度に比べ2倍濃度管理では障害果などの格外品が多くなるが、総収量は同等となる(図3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 冷却水を天然水源から得る場合、培養液を13度C未満に冷却可能な水源として水温11度C以下の地下水、湧水が望ましい。
  2. 本技術を利用する場合には(独)農研機構の特許実施許諾の手続きが必要になるので、下記担当に問い合わせること。【問い合わせ先:東北農業研究センター運営チーム 019-643-3437】
  3. 根域冷却処理により得られる果実の商品果を30g 以上とした場合、慣行の栽培法(常温−標準区)に比べ商品果収量は慣行の66〜81%となる(図3)。
  4. 図中のデータは、供試した7品種の平均値である(図1)。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
冷水資源を利用した根域冷却による野菜の高品質化技術の開発
予算区分
国庫
研究期間
2007〜2009 年度
研究担当者
藤尾拓也、佐藤弘