研究所トップ研究成果情報平成22年度

晩生で多収・良食味の水稲新品種候補「秋田97号」の育成

[要約]

水稲「秋田97号」は“晩生”の粳種である 。同熟期の「はえぬき」と比較し、収量性が極めて高く、いもち病圃場抵抗性、穂発芽性も改善されている。耐冷性は「はえぬき」並である。玄米は千粒重が大きく良質で、食味は「あきたこまち」並に良好である。

[キーワード]

イネ、秋田97 号、晩生、多収、良質、良食味

[担当]

秋田農技セ農試・作物部

[代表連絡先]

電話018-881-3330

[区分]

東北農業・作物(稲育種)

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

秋田県における水稲品種作付け比率は「あきたこまち」が粳種の約80%を占めている。しかし、近年、地球温暖化が進行する中、安定的に良質米を得るためには、異なる熟期の品種をバランス良く作付けし登熟期高温に遭遇する危険を分散する必要がある。そのため、「あきたこまち」の作付偏重を是正し多様なニーズに対応できる晩生品種が要望されている。そこで、晩生で収量性の高い安定生産可能な良質・良食味品種を育成する。

[成果の内容・特徴]

  1. 水稲「秋田97号」は、秋田県農林水産技術センター農業試験場において晩生の多収・良食味品種を目標とし「秋田59号(めんこいな)」を母、「奥羽366号(ちゅらひかり)」を父として1998 年に人工交配を行い、その後代より育成した系統である。
  2. 出穂期、成熟期ともに「はえぬき」並で、育成地では“ 晩生”に属する(表1)。
  3. 稈長は「はえぬき」より長く「ひとめぼれ」並、穂長は「ひとめぼれ」並である。穂数は「はえぬき」、「ひとめぼれ」より少なく、草型は“ 中間型” に属する。耐倒伏性は「はえぬき」より弱い“ やや強” である。籾には中芒を生じ、穎色は“ 黄白”、ふ先色は“ 白” である(表1)。
  4. いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia” を持つと推定され、圃場抵抗性は「はえぬき」、「ひとめぼれ」よりも強く葉いもちが“ やや強”、穂いもちが“ 強” である。耐冷性は「はえぬき」、「ひとめぼれ」並の“ 極強”、穂発芽性は「はえぬき」よりし難く“ やや難” である(表1)。
  5. 収量性は「はえぬき」、「ひとめぼれ」より明らかに優る(表1)。玄米は千粒重が「はえぬき」、「ひとめぼれ」より1g 以上大きく、品質は「はえぬき」、「ひとめぼれ」並に良好で“ 上中” である(表1写真1)。
  6. 玄米粗タンパク質含有率は「はえぬき」より低く「ひとめぼれ」並である(表1)。
  7. 食味は「あきたこまち」並の“上中” である(表1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 「はえぬき」に替えて秋田県の奨励品種候補として検討中である。そのため、2011 年に種苗法に基づく品種登録の出願を予定している。
  2. 適応地帯は秋田県内平坦部一円で、10,000ha 程度の普及が見込まれる。
  3. 耐倒伏性が「はえぬき」より弱いため、多肥栽培は避ける。

[具体的データ]

(秋田県農林水産技術センター農業試験場)

[その他]

研究課題名
第3期次世代銘柄米品種の開発
予算区分
県単
研究期間
1998 〜 2010 年
研究担当者
川本朋彦、加藤和直、小玉郁子、松本眞一、佐藤雄幸