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離乳子牛を訓練することで車両への積み込み作業の負担が軽減される

[要約]

離乳時の子牛に車両への積込訓練を施すことにより、積込時間の個体間ばらつきが抑えられて作業時間が短縮できる。訓練5週後も訓練の効果は持続し、積込時間の短縮と、積込作業に対する子牛のストレスを軽減できる。

[キーワード]

離乳、訓練、積込、省力化、ストレス低減

[担当]

東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域

[代表連絡先]

電話019-643-3564

[区分]

東北農業・畜産

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

車両への積込作業は、牛と作業者双方に困難で危険を伴う場合が多い。車両への積込が困難な牛の存在は、公共草地への入退牧時の作業に労力を要するだけでなく、放牧の実施を考える農家に心理的障壁になっている。経験的にあらかじめ作業への馴致を行うことで、その後の作業の省力化が図られることが知られている。これまでの研究では、離乳時には学習能力が一時的に向上することが明らかにされており、子牛の体格が小さく取り扱いが容易な離乳時に作業への馴致を行うことは、少ない労力で高い訓練効果が期待できる。そこで本研究では、離乳時に車両への積込に対する訓練を行うことで、積込作業の効率化を図ることを目的とする。訓練による牛の行動変化や訓練者の労力を調べるとともに、訓練から5週間後に訓練群と非訓練群との積込の作業効率や労力を比較する。

[成果の内容・特徴]

  1. ホルスタイン種子牛5頭に対し、8週齢の離乳時に5日間連続で家畜運搬車への積込を1日1回行う。訓練者は1人でロープを用いたけん引のみで、スタートラインから12m 先の運搬車に子牛を積み込む。積込後報酬として角砂糖を子牛に与える。
  2. 訓練時の積込に要した時間は次第に短くなる(図1)。個体間の積込時間のばらつきは1日目(変動係数:127.4%)から5日目(変動係数:15.4%)にかけて小さくなる。このことから、訓練によって個体間のばらつきが抑えられ、積込時間を短縮できる。
  3. 訓練者の心拍は1日目のみ訓練の前後で有意に上昇する。唾液アミラーゼ活性および唾液中コルチゾル濃度については、どの訓練日でも訓練前後で差がない(表1)。
  4. 離乳から5週間後に訓練と同条件で積込を2日間連続で1日1回行う。訓練を施した訓練群と訓練を施さない非訓練群の間で積込に要した時間、子牛へのストレスおよび作業者への負担について比較する。訓練群は対照群に比べて積込に要した時間が有意に短い(図2)。また、子牛の心拍数、血漿中コルチゾル濃度、遊離脂肪酸は対照群でのみ積込によって有意に上昇する(表2)。離乳時の子牛に対する積込の訓練は積込の作業効率を改善し、取り扱いに対する子牛のストレスを減らす。
  5. 積込後の作業者の心拍数は対照群に比べて訓練群で有意に低いが、唾液中アミラーゼ活性とコルチゾル濃度は群間で差がない。

[成果の活用面・留意点]

  1. 訓練の実施によって車両への積込を安全・容易にすることで、公共草地への入退牧時の負担低減や損耗防止および作業者の安全確保に資する。
  2. 訓練は1人によるけん引のみで行う必要はなく、複数の作業者や牛後方からの追い立てによって、より簡単に行うことが可能である。
  3. 車両への積込は市場への出荷など生涯を通じて行われる作業であり、訓練効果の持続性について今後継続した検討が必要である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
預託期間拡張を可能とする公共牧場高度利用技術の開発
予算区分
交付金
研究期間
2011 年度
研究担当者
深澤充
発表論文等
Fukasawa M. (2012) Anim. Sci. J. (Accepted)