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津波被災水田(無作付け)での自然降雨によるEC推移

[要約]

津波被災水田のECは、自然降雨による積算降水量1000mm経過で、堆積層、T層とも調査地点の平均で 0.6dSm-1を下回るが、一部地点のT層では逆に上昇する事例がある。ECの推移は、堆積層下15cm、30cmの土壌硬度によって、(1)急低下型、(2)緩低下型、(3)上昇型の3つに類型化される。

[キーワード]

津波被災、EC、土壌硬度

[担当]

岩手県農業研究センター・環境部・生産環境研究室

[代表連絡先]

電話0197-68-4422

[区分]

東北農業・基盤技術(土壌肥料)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

2011 年3 月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震及び津波で、甚大な被害を被った岩手県沿岸部の農業の復旧・復興に向け、その具体的な技術対策を確立する必要がある。しかし、津波被災水田で水稲の作付けを再開するための除塩対策については、知見が少ない。そこで、津波被災により作付けが困難となった水田圃場を対象に、自然降雨による層位別土壌EC の推移と土壌硬度を調査・解析し、水稲作再開に向けた除塩対策の基礎資料とする。

[成果の内容・特徴]

  1. 津波被災以降、積算降水量で1000mmを経過すると、津波による堆積層(泥土及び細砂)のEC は岩手県の除塩基準である0.6dSm-1を概ね下回る(図1)。
  2. I層(堆積層下0〜20cm深)のEC は除塩基準を下回る事例が多いが、堆積層下15cm、30cmの土壌硬度が高い2 地点ではEC が上昇する事例が見られる(図2)。
  3. 積算降水量1000mm 経過時点でのI層のEC の増減は、堆積層下15cm、30cm 層位の土壌硬度と正の相関がある(図3)。
  4. これらの結果から、I層のEC の推移は、堆積層下の土壌硬度(図4)により以下の3つに類型化される。
    1. 急低下型(被災直後から低下するパターン)
      :堆積層下15cm・30cmの土壌硬度が0.65MPa 未満・1.7MPa未満
    2. 緩低下型(上昇・低下を繰り返して後に低下するパターン)
      :堆積層下15cm・30cmの土壌硬度が0.65MPa 以上・1.7MPa未満
    3. 上昇型(被災直後より上昇するパターン)
      :堆積層下15cm・30cmの土壌硬度が0.65MPa 以上・1.7MPa以上

[成果の活用面・留意点]

  1. 土壌硬度は、貫入式土壌硬度計(DIK5520、1kgf cm-2=0.098MPa)により4反復で測定した。
  2. 調査圃場の土性は、I層・II層(堆積層下21〜40cm深)とも埴壌土(CL、粘質)が主体で、一部に砂壌土(SL、壌質)があり、地下水位は堆積層下60cm以内に見られない。
  3. II層及びIII層(堆積層下41〜60cm 深)のEC は、I層のEC 低下に伴い上昇する場合がある
  4. 礫層がある圃場では、土壌硬度が高くても排水良好となりEC が速やかに低下する事例がある。
  5. 水田の湛水透水性については、過去に作土下50cmの土壌硬度(緻密度)と土性から類型化した事例がある(地力保全基本調査総合成績書、1978年3月、岩手県)。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
津波被災農地における除塩対策実証
予算区分
県単
研究期間
2011〜2012年度
研究担当者
佐藤喬、大友英嗣、吉田宏(岩手農研セ・県北研)