研究所トップ研究成果情報平成23年度

牧草等を利用して土壌を剥ぎ取れば、土壌中の放射性物質を効率的に除去できる

[要約]

牧草などが草生している転換畑において、ターフスライサーを利用して3cmの厚さで表層を除去すると、土壌中の放射性物質(セシウム)が90%以上減少する。

[キーワード]

除染、表土剥ぎ取り、放射性物質

[担当]

福島県農業総合センター企画経営部経営・農作業科

[代表連絡先]

電話024-958-1700

[区分]

東北農業・基盤技術(作業技術)

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

農地に降下した放射性物質は大部分が土壌表層近くに存在すると考えられるが、これら表層土壌を効率的に除去する手法を検討し、農地の放射性物質を減ずる技術を開発する。

ここでは、スガノ農機製のターフスライサー(図1)を用いる。この機械は、競馬場などの芝を切り取るときに利用される機械であるが、表層にある放射性物質をあまり分散させないために、牧草と表層土壌を芝のように剥ぎ取れれば効率的に放射性物質の除去が可能である。

[成果の内容・特徴]

  1. 表層土壌を切り取る前に、牧草等を手でつかんで引き抜いた場合、牧草等の根により土壌が絡め捕られることを確認する。牧草等は刈り取らないで、直接ターフスライサーで牧草等と表層土壌を同時に帯状に切り取り、フロントローダーを用いて切り取った表層を剥ぎ取る(図1表1)。
  2. 表層土壌の剥ぎ取りについては、土壌の状態が柔らかい場合、フロントローダーで前進してすくい取ると、切り取った牧草と土壌の重量によりバケットが下がり、地面に引っ掛かる。そこで、フロントローダーのバケットにより表層土壌を引き剥ぐ手法を用いる(図1)。
  3. ターフスライサーの切り取り厚の違いによる試験結果に大きな差はなく、切り取り速度は0.55km/h 程度、剥ぎ取り時間は3cm 剥ぎ取りで170 秒/25 平方メートルである(表2)。土壌中の放射性セシウムの値は、90%以上減少する(表3)。
  4. 10a 当たりの作業時間は、表土を3cmの厚さで切り取る条件では、切り取り時間は135分、剥ぎ取り時間は113 分、また、牧草を含む剥ぎ取った土量は41.6t である。

[普及のための参考情報]

  1. 普及対象
    放射性物質が降下し除染が必要な地域
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等
    東北、関東において、放射性物質が降下後未耕起で牧草などの草地で土壌が覆われている農地
  3. その他
    福島県における農地の除染マニュアルに掲載予定。
    農林水産省平成23年9月14日プレスリリース
    「農地土壌の放射性物質除去技術(除染技術)について」に掲載
    ターフスライサーは、スガノ農機で受注生産されている。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
土壌表面に残留する放射性物質の除去・低減技術の開発
予算区分
科学技術戦略推進費(福島県の放射性高レベル負荷地帯における各種農作物による放射性セシウムのリスク低減技術の開発)
研究期間
2011 年度
研究担当者
松葉隆幸、大野光