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葉色が赤い観賞用水稲新品種「べにあそび」の育成

[要約]

「べにあそび」は“極短稈”の葉色が赤い観賞用水稲品種で、最高分げつ期〜穂揃期にかけて、株全体が赤く見える。田んぼアートでは、赤色として描く部分に利用することにより、絵柄をさらに色彩豊かに表現することができる。

[キーワード]

イネ、べにあそび、赤い葉、観賞用、田んぼアート

[担当]

青森県産業技術センター農林総合研究所・水稲品種開発部

[代表連絡先]

電話0172-52-4312

[区分]

東北農業・作物(稲育種)

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

近年、米や農業への関心を高め、地域の活性化を図るために、観賞用稲を使った田んぼアート等が注目を集めている。田んぼアートの技術は年々向上しており、さらに精巧な表現を求める現場からは、色彩を拡大できる品種の育成が要望されている。このため、葉色が白い水稲品種「ゆきあそび」を育成し、種子の配付を開始したが、さらに多彩な葉色をもつ品種を育成する。

[成果の内容・特徴]

  1. 「べにあそび」は、新たな葉色の観賞用稲の育成を目標に、2002 年に「中稈紫稲B」を母、「奥羽観383 号」を父として人工交配を行い、その後代から育成した品種である(表1)。なお、この品種は、特許権者である村井正之氏許諾のもとに、特許第4489233号【赤紫または赤色の葉を有する稲及びその作成方法】の特許技術に基づいて育成したものである。
  2. 出穂期は「つがるロマン」より4日程度、成熟期は9日程度遅く、育成地では“晩生”に属する糯種である(表1)。
  3. 稈長は“極短稈”で、穂長は「つがるロマン」並みで穂数は少なく、草型は“中間型”である(表1)。
  4. 移植時の苗の葉色は、やや濃い緑色の一部に紫色を呈する。
  5. 移植後分げつ盛期頃には、葉色は全体に紫色で、一部緑色を呈する。最高分げつ期の頃から葉身に白色が発現し始め、次第に白色部分が拡大し全体にやや薄いピンク色になり、さらに出穂期頃にかけて赤みが増し、全体的に鮮やかな濃いピンク色を呈する(写真1)。
  6. 出穂期以降、登熟が進むにしたがい赤みが薄くなり、全体が緑色を帯びた色になる。
  7. 障害型耐冷性は“極弱”である。いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia”と推定され、ほ場抵抗性は葉いもち・穂いもちともに“やや弱”である。玄米重は「つがるロマン」の5割程度で、収量性は低い(表1)。
  8. 葉色が鮮やかな濃いピンク色であることから、観賞用・景観用に向き、田んぼアート等では赤い色として描く部分に利用することにより、絵柄を色彩豊かに表現することができる。見頃は、最高分げつ期〜穂揃期頃である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 普及対象は、田んぼアート実施者・団体、稲わら細工・加工品生産者等である。
  2. 普及予定地域・普及予定面積は、全国に約2 ha である。
  3. 最高分げつ期以降高温が続くような気象条件下では、葉身の白色の発現が抑えられ、くすんだ紫色に近い葉色となる場合がある。
  4. いもち病抵抗性は弱いので、基本防除を遵守する。
  5. 種子の配付は、青森県産業技術センターホームページ(http://www.aomori-itc.or.jp/)上で、価格・配付条件等を公開し行う。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
第II期水稲良食味品種早期開発事業及び「売れる青森米」水稲新品種強化育成事業
予算区分
県単
研究期間
2002 〜 2010 年度
研究担当者
川村陽一(青森農総研)、小林渡(青森農総研)、前田一春(青森農総研)、三上泰正(青森産技セ)、今智穂美(青森農総研)、神田伸一郎(青森農総研)、小林健一(青森県西北県民局)
発表論文等
1)小林ら(2011)東北農業研究、64:1-2.
2)川村ら「べにあそび」品種登録出願2011 年4 月11 日(第25819 号)