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7月上旬における「ひとめぼれ」の幼穂形成期の追肥判定の目安
[要約]
岩手県における「ひとめぼれ」は、7月5日の稲体窒素吸収量+土壌アンモニア態窒素量を目安として幼穂形成期の追肥を判定できる。また、草丈とSPAD測定値と移植後の積算平均気温の積も幼穂形成期追肥を判定する目安にできる。
[キーワード]
水稲、追肥、窒素吸収量、土壌アンモニア態窒素量
[担当]
岩手県農業研究センター・技術部作物研究室
[代表連絡先]
電話0197-68-4417
[区分]
東北農業・作物(稲栽培)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
岩手県の稲作においては、奨励品種の栄養診断基準を定め、安定生産を図ってきている。しかし、栄養診断基準は幼穂形成期を中心とした判定であることから、事前の指導のためにより早い生育ステージでの診断方法が求められている。そこで、岩手県農業研究センターの調査結果を解析し、岩手県の水稲作付けの約65%を占める「ひとめぼれ」の追肥判定の目安を策定し、安定生産につなげることをねらいとする。
[成果の内容・特徴]
- 「ひとめぼれ」で10a当り540kg 以上の収量を確保するために、幼穂形成期の概ね10日前に幼穂形成期追肥実施を判定する目安は、7月5日の稲体窒素吸収量+土壌アンモニア態窒素量が6kg/10a未満のとき幼穂形成期の窒素成分追肥量は1〜2kg/10a、6kg/10a以上のとき幼穂形成期の窒素成分追肥量は0〜1kg/10aである(図1)。
- 7月5日の稲体窒素吸収量+土壌アンモニア態窒素量と稲体窒素吸収量は高い正の相関関係があり、稲体窒素吸収量5.1kg/10aのとき窒素吸収量+土壌アンモニア態窒素量6kg/10aに相当することから(図2)、稲体窒素吸収量+土壌アンモニア態窒素量の代わりに追肥の判定に用いることができる。7月5日の稲体窒素吸収量が5.1kg/10a未満のとき幼穂形成期の窒素成分追肥量は1〜2kg/10a、5.1kg 以上/10aのとき幼穂形成期の窒素成分追肥量は0〜1kg/10aである。
- 草丈×SPAD測定値×移植後の積算平均気温は稲体窒素吸収量と高い正の相関関係があり(図3)、生産現場で稲体窒素吸収量や土壌アンモニア態窒素の測定が困難な場合、7月5日の草丈、SPAD測定値と移植後の積算平均気温により幼穂形成期追肥実施を簡易に判定できる。7月5日の草丈×SPAD測定値×移植後の積算平均気温が232万未満のとき幼穂形成期の窒素成分追肥量は1〜2kg/10a、232 万以上のとき幼穂形成期の窒素成分追肥量は0〜1kg/10aである。
- 従来の栄養診断に加えて、草丈、SPAD測定値と移植後の積算日平均気温により、新たに幼穂形成期の栄養診断値推定も可能である(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 追肥は幼穂形成期に栄養診断基準を確認して実施すること。
- 追肥の目安は岩手県農業研究センターのデータ(H10〜H23)を基に策定したため、極端な早植や晩植、疎植や密植の場合には指標が当てはまらないことがある(「ひとめぼれ」は岩手県農業研究センターで5月15 日に約21 株/平方メートル、4本/株で移植)。
- 6月中の高温により生育が旺盛となり、土壌窒素が極端に減少し、幼穂形成期に葉色が低下した場合は、追肥が必要となる場合がある。
- 草丈、SPAD測定値と移植後の積算平均気温で判定した場合、復元田等土壌中に残存する窒素が多い場合は、誤差が大きくなる場合がある。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- 水稲作況調査と作柄成立要因の解析
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 1997〜2013 年
- 研究担当者
- 高橋 智宏、日影 勝幸