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牛ふん堆肥と炭酸苦土石灰の施用が野菜のカドミウム収支に及ぼす影響

[要約]

カドミウム汚染圃場における野菜栽培では堆肥と石灰の多施用により、可販物のCd濃度を低減させる。また、堆肥や石灰の多施用により圃場への持込Cd 量は増加するが、収穫時に地上部全量を持出すことで土壌にカドミウムを蓄積させずに維持管理できる。

[キーワード]

牛ふん堆肥、アルカリ質肥料、カドミウム収支

[担当]

秋田農技セ農試・生産環境部・土壌基盤担当

[代表連絡先]

電話018-881-3330

[区分]

東北農業・基盤技術(土壌肥料)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

水稲と比較して畑作物や野菜のカドミウム(Cd)吸収については知見が少なく、Cd 吸収抑制技術としてアルカリ質肥料や堆肥の施用が試みられているものの、対策技術の確立には至っていない。そこでCd 汚染畑圃場における牛ふん堆肥(堆肥)と炭酸苦土石灰(石灰)の併用がブロッコリー、ニンジン、エダマメの可販物Cd 濃度に与える影響を明らかにするとともに、圃場のカドミウム収支を把握し、カドミウム吸収抑制栽培技術に参考となる知見を得る。

[成果の内容・特徴]

  1. 石灰多量区の土壌pH は連用に伴い上昇する。さらに堆肥多量区のpH は上昇が早いものの、連用3年目では堆肥少量区とほぼ同じpH を示す。一方、石灰と堆肥少量区(慣行区)では、土壌pH は上昇しない。また、地上部全量を持出した場合の土壌Cd 濃度は石灰多量区ほど高い(表1)。
  2. 各作目の可販物収量は秋田県の目標収量を確保している(表2)。また、各作目の可販物Cd 濃度は石灰と堆肥多量区で最も低く、慣行区のCd 濃度の22〜48%である。ブロッコリーとエダマメのCd 濃度は併用した堆肥の施用量が多い方が低下するのに対して、ニンジンは堆肥施用量の多少ではCd 濃度の低減効果は認められない(図1)。
  3. 圃場へ持込まれるCd 量は石灰と堆肥多量区が多いものの、作物のCd 吸収量は減少し、持出しCd 量は少ない。可販物のみを持出す場合では石灰多量区のCd 負荷量は正となり、土壌へCd が蓄積されるが、残渣を含めた全量持出しの場合では全区において持込Cd 量よりも持出Cd 量の方が多く、土壌にCd を蓄積させない(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 試験は灰色低地土Cd 汚染土を充填した秋田農試内の枠圃場(各区5m×5m)で実施したものである。0〜50cm がCd 汚染土壌、50cm 以深が非汚染土壌(0.04 mg kg-1)である。
  2. 各作目は収穫後に地上部全てを圃場から持ち出している。また、カドミウム収支においては下方への損失を考慮していない。
  3. 用いた牛ふん堆肥は副資材にオガクズを混和しており、水分=51%、現物重あたりの化学性はpH=8.5、N=0.60%、P2O5=0.70%、K2O=1.17%、C/N=31.7、Cd=0.05mg kg-1である。
  4. 秋田県野菜栽培技術指針ではブロッコリー、ニンジン、エダマメへの堆肥の慣行施用量は1000〜2000g m-2である。堆肥多施用区の可給態リン酸は当初74mg kg-1から連用3年目では415mg kg-1と増加するため、土壌診断を実施し、適正な土壌養分状態を維持する必要がある。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
「野菜等の品目別カドミウム濃度の解明と吸収抑制技術の開発」、「土壌環境総合対策事業」
予算区分
実用事業、国庫補助
研究期間
2007〜2009、2010〜年度
研究担当者
中川進平、伊藤正志、武田悟、石田頼子、高階史章(秋田県立大)、金和裕