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稲わら散布後の浅耕や石灰窒素施用によるメタンの削減と水稲生育の改善
[要約]
秋の稲わら散布後の浅耕や石灰窒素の施用により翌年のメタン発生量が減少する。また、同処理により水稲の茎数が増加し、精玄米収量は同等以上である。秋の浅耕により玄米粗タンパク質含有率はやや低下する。
[キーワード]
メタン、二酸化炭素等価量、稲わら、秋耕、浅耕、石灰窒素
[担当]
山形県農業総合研究センター・食の安全環境部
[代表連絡先]
電話023-647-3500
[区分]
東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
山形県では、80%以上の水田で稲わらの秋散布・春すき込みが行われている。春にすき込まれた稲わらは、水稲の初期生育を抑制し、収量、品質に負の影響を与える場合がある。また、温室効果ガスであるメタンの発生源となる。以上のことから、水田の耕起方法や稲わら分解促進資材等により稲わら分解を促進し、メタン発生の低減と水稲生育の改善をはかる。
[成果の内容・特徴]
- 稲わらを秋季にすき込む場合、浅耕(約5cm程度の深さ)すると翌年に発生するメタンが減少する(図1)。メタンと同じく温室効果ガスである一酸化二窒素分を合計した二酸化炭素等価量は対照(稲わらの秋散布、春すき込み)に比べ27〜55%削減される(図2)。
- 浅耕は通常耕(約17〜20cm程度の深さ)と比較してメタン削減効果が年次に関わらず安定して高い(図2)。秋季に通常耕を行った場合、春先の土壌水分が浅耕や対照より高まり、メタン低減効果が得られない場合がある。
- 秋に石灰窒素を20kg/10a散布し、翌年の春に耕起した場合もメタンが減少し、二酸化炭素等価量は対照に比べ22〜35%削減される(図1、図2)。
- 秋の浅耕または石灰窒素の施用により、翌年の水稲は初期生育が促進され、茎数は増加する(図3)。
- 秋の浅耕または石灰窒素の施用により、精玄米重は同等以上となる。秋に浅耕した場合、玄米粗タンパク質含有率が対照よりやや低下する(図4)。
[成果の活用面・留意点]
- 日本海側積雪寒冷地域の沖積土に適用する。
- 気象、土壌、圃場の条件によりメタン削減効果が異なる可能性がある。
- 石灰窒素の散布は、圃場条件等により秋の浅耕が困難な場合を想定している。また、化学肥料由来窒素にカウントされるため、特別栽培では留意する。
- 浅耕や石灰窒素の施用は、稲わら散布後なるべく早い時期に実施する。
[具体的データ]
( 塩野宏之)
[その他]
- 研究課題名
- 積雪寒冷地水田における温室効果ガス低減のための有機物分解促進技術の確立
- 予算区分
- 委託プロ
- 研究期間
- 2010〜2012 年度
- 研究担当者
- 塩野宏之、齋藤寛、今野陽一、布山美恵、熊谷勝巳