研究所トップ≫研究成果情報≫平成24年度
早生で良食味の水稲新品種「秋のきらめき」の採用
[要約]
水稲「秋のきらめき(秋田96 号)」は「あきたこまち」並に収量、玄米外観品質が優れる早生の良食味品種で、中山間地域における良食味米の安定生産が期待できることから、秋田県において2013 年に奨励品種に採用する予定である。
[キーワード]
イネ、秋のきらめき(秋田96 号)、早生、玄米外観品質、良食味
[担当]
秋田農試・作物部・作物栽培担当
[代表連絡先]
電話018-881-3330
[区分]
東北農業・稲(稲品種)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
これまで秋田県では早生から晩生までの「あきたこまち」並の良食味品種を育成し、県内全域に「あきこまち」並の良食味品種を普及することを目指してきた。現在、中山間地域向けとして奨励されている早生品種の「たかねみのり」は、耐冷性や耐病性、食味が劣るため、これらの特性を改善した新品種が要望されている。「秋のきらめき」は「たかねみのり」よりも耐病性、耐冷性が強化され(川本ら2010)、「あきたこまち」並に収量、玄米外観品質、食味が優れることから、奨励品種に採用することにより、中山間地域における良食味米の安定生産が可能となる。そこで、「秋のきらめき」の採用に際して、秋田県内における「秋のきらめき」の生育、収量、品質について「たかねみのり」、「あきたこまち」と比較し、その栽培特性を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 水稲「秋のきらめき」の出穂期は「あきたこまち」より約2〜3日早く、「たかねみのり」より1〜2日遅く、成熟期は「あきたこまち」より約3〜5日早く、「たかねみのり」より1〜2日遅い。稈長は「たかねみのり」よりやや長く、「あきたこまち」並〜短めで、穂長は「たかねみのり」並で、「あきたこまち」よりやや長い。穂数は「たかねみのり」より15 〜 24%、「あきたこまち」より6〜 16%多い” 穂数型” である。耐倒伏性は、「たかねみのり」、「あきたこまち」並である(表1、2)。
- 玄米収量は「たかねみのり」、「あきたこまち」並かやや優れる(表1、2)。
- 玄米外観品質は「あきたこまち」並に良好で、玄米蛋白質含有率は「あきたこまち」並、味度値は「たかねみのり」より優れる(表1、2)。
- 食味は「たかねみのり」に比べ、柔らかく、粘り、味、外観が良く、総合評価も優れ、この傾向は中山間地域でより明瞭となる。「あきたこまち」と比較すると、粘りはやや劣る傾向がみられるものの、総合評価は同程度であり、中山間地域では外観が優れる傾向がみられる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 品種特性:川本ら2010. 早生で耐冷性が強く良食味の水稲新品種候補「秋田96 号」の育成. 平成22 年度東北農業研究成果情報. http://www.naro.affrc.go.jp/org/tarc/seika/jyouhou/H22/suitou/H22suitou003.html(2012 年12 月20 日閲覧)
- 普及予定地域・普及面積:秋田県内中山間地域(B1、B2、C)の5,000ha 程度において、「たかねみのり」に替わる秋田県の奨励品種として採用する予定である(図1)。
- その他:穂数が多いため、紋枯病の適期防除に努める。品質の低下を防止するため、多肥栽培は避ける。
[具体的データ]
(秋田県農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 水稲奨励品種決定調査
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2007 〜 2012 年度
- 研究担当者
- 松波寿典、柴田智、松本眞一、佐野広伸、佐藤雄幸
- 発表論文等
- 川本ら「秋田96 号」品種登録出願2012 年11 月8 日(第27326)