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津波被災農地における効果的なコウキヤガラ防除法
[要約]
コウキヤガラに対してはピラクロニルやALS阻害剤を含む水稲用除草剤の効果が高い。コウキヤガラの多発した休耕田では5月末までに非選択性除草剤を散布することで塊茎生産を抑制できる。また2cm篩目で発生土壌を篩うことで塊茎除去が可能である。
[キーワード]
津波被災農地、コウキヤガラ、水稲、休耕田、除草剤、塊茎
[担当]
宮城県古川農業試験場・水田利用部
[代表連絡先]
電話0229-26-5106
[区分]
東北農業・稲(栽培)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
宮城県沿岸部の農地には水稲作の難防除雑草であるコウキヤガラの多発圃場が分布している。東日本大震災の津波によりこれらの分布が拡大し、復旧までの休耕期間に増殖することが懸念される。そこで、農地復旧後に再開される水稲作においてコウキヤガラに有効な水稲用除草剤とその防除効果を明らかにするとともに、休耕期間に増殖した塊茎が農地に残らないようにするための効果的なコウキヤガラの防除対策について検討する。
[成果の内容・特徴]
- コウキヤガラに対してはピラクロニルやアセト乳酸合成酵素(ALS)阻害剤を有効成分に含む水稲用除草剤の効果が高い。ただし、単用処理では効果が不十分になることもあるため、有効な前処理剤や後処理剤との体系で使用する(表1)。
- 土壌塩濃度が高い場合でも上記成分を含む除草剤の防除効果は高く、茎葉の生育を抑制することで塊茎の生産も強く抑制し(図1)、水稲に対する薬害も認められない。
- コウキヤガラが繁茂した休耕田では、5月末までに非選択性除草剤を茎葉散布することで、塊茎の生産も抑制することができる(図2)。
- コウキヤガラが繁茂した被災休耕田において、6月下旬に無人ヘリコプター等により非選択性除草剤を散布した事例では、コウキヤガラの塊茎サイズが1cm以下と小さくなる傾向があるが、大部分が生存している。しかし、8月時点では塊茎は地下茎により連結されているため、発生土壌を直接2cm篩目に通すことで大部分の塊茎を除去することができる(表2)。すなわち、土中の瓦礫除去に利用されている自走式スクリーン(篩目1〜4cm)等による塊茎の物理的除去も期待できる。
[成果の活用面・留意点]
- 普及対象:復旧農地耕作者、津波被災農地管理者、復旧事業従事者
- 普及予定地域:津波被災農地及びコウキヤガラが問題となる水田地帯
- 水稲作では適用雑草名として「コウキヤガラ」に登録のある除草剤、休耕田では適用場所として「休耕田」に登録のある除草剤を使用する。
- 水稲を作付けする場合には、丁寧に代掻きをして萌芽生育した個体を埋没させ、移植後の株の再生を抑制する。
- コウキヤガラの多発する休耕田では、4月初頭には萌芽が始まり、5月下旬には出穂が始まる。秋耕・春耕を行わない大豆作では、萌芽の揃った5月上旬にグリホサートカリウム塩液剤の散布で高い防除効果が得られる(佐伯ら、東北の雑草、2009)。
- 東日本大震災により津波被害を受けた農地において、地上散布ができない場合に限り、専門講習を受けた事業者のみ、専用登録剤・専用ノズルを用い、無人ヘリコプターによる非選択性除草剤の散布ができる。
- 秋冬期にかけてコウキヤガラの地下茎は枯れて塊茎は分散するので、復旧工事の施工時期にによっては、より細かい篩目を使用しないと物理的な除去は難しい。
[具体的データ]
(宮城県古川農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 「水稲関係除草剤適用性試験」
- 「津波被災水田の実態調査と除塩法・栽培管理技術の確立」
- 「食料生産地域再生のための先端技術展開事業」
- 予算区分
- (公財)植物調節剤研究協会受託、県単・復興交付金、農林水産省受託
- 研究期間
- 2008-2012 年度
- 研究担当者
- 大川茂範(宮城県古川農業試験場)