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低樹高と早期多収を可能にするリンゴ樹体ジョイント栽培

[要約]

「ふじ」/ JM7 の2年生苗木を地上高0.8 mまたは1.8 mの高さで主幹部を水平に誘引、隣接する木の基部と先端部を相互に接木(ジョイント)した樹形では、低樹高及び早期多収が可能となる。

[キーワード]

リンゴ、ジョイント、低樹高、早期多収

[担当]

宮城県農業・園芸総合研究所園芸栽培部

[代表連絡先]

電話022-383-8111

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

リンゴのわい性台木を用いた慣行の主幹形仕立てでは、一般的に樹高が高く、作業性に支障をきたすなどの課題がある。そこで、ナシのジョイント仕立ての研究成果をリンゴに応用し、主幹形仕立てよりも低樹高で、早期に成園化できる技術を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 「ふじ」/ JM7 の2年生苗木を列間距離4.0 m、樹間距離1.0 mまたは1.5 m間隔で植栽し、地上高0.8 mまたは1.8 mで主幹部を水平に誘引、隣接する木の基部と先端部を相互に接木(ジョイント)する。
  2. その後、当該主枝部から発生させた側枝を、地上高0.8 mで主幹部を水平に誘引した樹では斜め上方に(「側枝上方誘引型」樹形)、地上高1.8 mで主幹部を水平に誘引した樹では斜め下方に(「側枝下垂型」樹形)それぞれ誘引して樹形を構成する(図1)。
  3. ジョイントした樹形は、主幹形に比べて樹高を低く抑え、かつ早期に多収量を得ることができる。特に、樹間距離1.0 mの「側枝上方誘引型」樹形では、2年生苗木定植後3年目で10 a当たり収量は3t得られ、樹高は主幹形に比べて3割低くできる(表1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 供試樹は、いずれも2010 年に2年生苗木を定植した。また、樹体ジョイントは「側枝上方誘引型」樹形の樹間1.0 m樹では2010 年4月に、それ以外は2011 年4月におこなった。
  2. 樹体ジョイントする苗木長は、「側枝上方誘引型」樹形で2m以上、「側枝下垂型」樹形で3m以上確保する必要がある。
  3. ジョイント樹形では、主幹形に比べて果実の着色が劣る場合があることから、適正な側枝間隔(30 〜 40cm)の確保や着色管理の徹底を図る必要がある(表2)。
  4. ジョイント樹形栽培で側枝を長期間利用するためには、葉数を減らして側枝肥大を制限する必要がある。そのため、6月下旬に側枝上に発生した全ての新梢を概ね基部から5 cm 程度の位置で摘心する。
  5. 6月下旬の新梢摘心後に形成された果枝(「擬似果枝」)に翌年着果させる場合、青み果の発生割合を少なくするため、擬似果枝長が10cm 未満、果台長が2 cm 未満の果枝に着果させる(図2)。

[具体的データ]

(宮城県農業・園芸総合研究所)

[その他]

研究課題名
新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業
予算区分
実用技術
研究期間
2009 〜 2013
研究担当者
門間豊資、菊地秀喜、池田裕章(宮城県病害虫防除所)、柴田昌人、田口久美子、鎌田賢治
発表論文等
「リンゴのジョイント仕立て法の開発」(第3報)「夏季摘心が花芽形成に及ぼす影響」田口久美子、菊地秀喜、門間豊資、柴田昌人、園芸学会(2013.9)〔ポスター発表〕