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コンパクトイオンメーターを使った交換性カリとナトリウムの簡易分析法
[要約]
カリウム及びナトリウム用のコンパクトイオンメーターを使うことで、放射性セシウム吸収抑制対策のための土壌中の交換性カリ及び海水流入農地の除塩後の土壌中の交換性ナトリウムの実用的な精度での簡易測定が可能である。
[キーワード]
コンパクトイオンメーター、簡易分析、交換性カリ、交換性ナトリウム
[担当]
宮城県農業・園芸総合研究所・園芸環境部
[代表連絡先]
電話022-383-8118
[区分]
東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
カリウムは、作物にとって重要な要素であるとともに、土壌中の交換性カリが少ない土壌では放射性セシウムが吸収されやすいことが認められており、作付け前の交換性カリの測定が重要である。また、海水流入農地においては、除塩を行って土壌ECが低下しても、交換性ナトリウムが残存している場合があり、除塩後の土壌状態の把握には土壌ECのみではなく、交換性ナトリウムを測定することが望ましい。
土壌中の交換性カリ及び交換性ナトリウムの分析には、従来法では高価な装置を必要とする上、操作が煩雑で時間を要する。そこで、カリウム及びナトリウム用のコンパクトイオンメーターを使った簡易測定法を開発する。
[成果の内容・特徴]
- 使用機材(写真1)
コンパクトイオンメーター(HORIBA:LAQUAtwin B-731)(K+:カリウムイオン)
コンパクトイオンメーター(HORIBA:LAQUAtwin B-722)(Na+:ナトリウムイオン)
- 交換性カリ分析法
風乾土5gに0.003M硫酸アンモニウム液50mlを加え(土:抽出液=1:10)、30分間振とう、しばらく静置後、上澄み液をコンパクトイオンメーターで測定し、以下の式を用いて交換性カリに換算する(図1)。
交換性カリ(K2Omg/100g)=読み値(K+ppm)×4.58−3.27
- 交換性ナトリウム分析法
風乾土5gにpH7.0 1M酢酸アンモニウム液100mlを加え(土:抽出液=1:20)、1時間振とう後、No.6のろ紙でろ過、ろ液をコンパクトイオンメーターで測定し、以下の式を用いて交換性ナトリウムへ換算する(図2)。
交換性ナトリウム(Na2Omg/100g)=読み値(Na+ppm)×2.66−12.57
[成果の活用面・留意点]
- 交換性カリを測定する場合、NH4+の影響を受け、分析精度が低下するため、抽出液にはpH7.0 1M酢酸アンモニウム液ではなく、0.003M硫酸アンモニウム液を用いる。
- 交換性ナトリウムを測定する場合、付属の標準液で校正して測定すると値が振れる場合があるので、校正には塩化ナトリウムをpH7.0 1M酢酸アンモニウム液で溶かしたナトリウム標準液2点(150及び2000ppm)を使用する。
- 簡易分析は、交換性カリでは所内の堆肥連用圃場(高カリ土壌)、津波被災農地客土(低カリ土壌)、水田土壌の31点、交換性ナトリウムでは、海水流入農地土壌(砂土、壌土、埴土)30点を用いた。精密分析は、従来のショーレンベルガー法で抽出し原子吸光法で測定した。
- コンパクトイオンメーターの初期設定は、1点検量モードのため、2点検量モードに設定を変更する。
- コンパクトイオンメーターの価格はいずれも38,000円程度である。
[具体的データ]
(宮城県農業・園芸総合研究所)
[その他]
- 研究課題名
- 海水流入農地の実態把握と早期改善
- 県内農耕地における放射性物質の動態把握と農作物の吸収抑制対策の確立
- 予算区分
- 国庫補助
- 研究期間
- 2012 年度
- 研究担当者
- 村主栄一、上山啓一、河村花愛