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日本短角種に出産、哺育される黒毛和種子牛は発育が良い

[要約]

放牧条件下において胚移植により日本短角種から生まれ、親子放牧する黒毛和種子牛は、日本短角種母牛の泌乳能力が優れることにより、哺育期における体重増加ならび体型の発育・発達が加速する。

[キーワード]

日本短角種、黒毛和種、胚移植(ET)、親子放牧

[担当]

自給飼料生産利用・寒冷地肉用牛飼養

[代表連絡先]

電話019-643-3680

[研究所名]

東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

市場価値の高い黒毛和種(黒毛牛)の子牛生産を胚移植(ET)により日本短角種(短角牛)の夏山冬里方式に融合させることは、短角牛生産地域の収益性向上と経営の安定に有効な手段と考えられる。また、短角牛の特徴である泌乳能力の高さにより、短角母牛と親子放牧する黒毛ET子牛の発育が促進されることが期待される。一方、放牧を主体として生産、育成される黒毛子牛は、牛舎飼養の子牛より発育が遅れることが指摘されている。そこで、子育て能力の高い短角母牛にETを行い、そこから生産される黒毛子牛を親子放牧し、哺育期における生育への効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 5〜6月の放牧飼養下で短角母牛から出生する黒毛ET雄子牛(放牧・短角母牛区)は親子放牧し、補助飼料を無給与とする。牛舎において黒毛母牛と飼養する黒毛雄子牛(舎飼・黒毛母牛区)は自家産ロールサイレージを飽食とし、補助飼料を給与する。
  2. 放牧・短角母牛区の黒毛ET子牛の1ヵ月ごとの日増体量は、舎飼・黒毛母牛区の黒毛子牛や和牛登録協会による標準発育曲線に比べて、生時から1ヵ月齢の1ヵ月間において著しく高く、この傾向は4ヵ月齢まで継続する(図1)。
  3. 生時体重は差が認められないが、放牧・短角母牛区の黒毛ET子牛の体重は1ヵ月齢から3ヵ月齢まで優れている(図2)。
  4. 胸囲は、放牧・短角母牛区の黒毛ET子牛が1ヵ月齢以降から舎飼・黒毛母牛区の黒毛子牛や標準発育曲線に比べて大きくなり、月齢とともに差が広がる(図3−(a))。胸深(図3−(b))は1ヵ月齢において差が認められないが、2ヵ月齢以降から優れている。体高(図3−(c))は放牧・短角母牛区が高く推移する。

[成果の活用面・留意点]

  1. 放牧育成技術により、飼料代や飼養管理労働を節減しながら黒毛子牛の低コスト生産が可能となる。
  2. 短角繁殖経営における黒毛ET子牛導入の経営評価は、小梨ら(岩手農研セ研報3,p109-114,2003)の報告を参考にする。
  3. 放牧・短角母牛区の黒毛ET子牛に、下痢など過多な飲乳量から心配される体調不良は認められない。

[具体的データ]

(山口学)

[その他]

中課題名
寒冷積雪地帯での土地資源と自給飼料を活用した肉用牛飼養技術の開発
中課題番号
120d2
予算区分
交付金
研究期間
2009〜2013年度
研究担当者
山口学、池田堅太郎、竹之内直樹、東山雅一、渡邊彰
発表論文等
Yamaguchi, M et al. (2013) Asian-Australasian J. Anim. Sci. 26: 930-934.