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多収で酒造適性の優れる水稲新品種候補「秋田107号」の育成
[要約]
水稲「秋田107号」は収量性が高く酒造適性に優れた加工用の粳種である。秋田県では“中生の晩”に属する。「あきたこまち」に比べ15%以上多収で、製成酒の酒質が高いことから、高品質で低価格な純米酒の原料米として利用できる。
[キーワード]
イネ、秋田107 号、多収、加工用、酒造適性、純米酒
[担当]
秋田農試・作物部水稲育種担当
[代表連絡先]
電話018-881-3338
[区分]
東北農業・稲(稲品種)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
縮小する清酒市場を背景に、県内の蔵元では新たな需要を創出するため、コストパフォーマンスに優れた純米酒の開発に取り組んでいる。
低価格の純米酒には、多くの場合「あきたこまち」が原料米として使用されることが多い。しかし、これまで以上に原料米コストを削減し酒質を高めるには、原料米品種の収量性の改良と酒造適性の向上が課題となっていることから、「あきたこまち」に比べ明らかに多収で、酒造適性に優れた加工用粳種を開発する。
[成果の内容・特徴]
- 水稲「秋田107 号」は、秋田県農業試験場において「岩手75号」を母、「秋田63 号」を父として2004 年に人工交配を行い、その後代より育成した品種である。
- 出穂期及び成熟期は、ともに「ゆめおばこ」よりやや早く、「あきたこまち」より遅い。育成地では“ 中生の晩” に属する(表1)。
- 「あきたこまち」に比べ、稈長はやや短く、耐倒伏性は“ 中” である。穂長はやや長く、穂数がやや多いことから、草型は“ 偏穂数型” に属する(表1)。籾には短芒を生じ、ふ色は“ 黄白”、ふ先色は“ 白” である(表1)。
- いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia、Pii” を持つと推定され、圃場抵抗性は葉いもちは“やや弱”、穂いもちが“中”である(表1)。耐冷性は“ 中” で、穂発芽性は「あきたこまち」よりし易く、「ゆめおばこ」並の“ 中” である(表1)。
- 千粒重は「ゆめおばこ」と同程度で、「あきたこまち」よりやや重い。精玄米重は「ゆめおばこ」と同程度で、「あきたこまち」より標肥で16%、多肥で17%多収である。玄米品質は「ゆめおばこ」、「あきたこまち」並の“ 上中” である(表1、図1)。
- 70%白米整粒歩合は「あきたこまち」より高く、精米特性が優れる。(表2)
- 製成酒のアミノ酸度は「あきたこまち」より低く、後味がきれいなことから、官能評価の評点は優れる(表2)。
- 実規模での醸造を実施した酒造メーカーの評価は、製造過程における操作性及び酒質ともに既存原料に比べ優れる評価であった(表3)。
[普及のための参考情報]
- 普及対象:秋田県内の生産者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:適応地帯は秋田県内平坦部一円、200haの普及が見込まれる。
- その他:2013 年9 月に種苗法に基づく品種登録の出願をした。栽培上の留意点として、酒造用原料米であることから、極端な多肥栽培は避ける。葉いもちの圃場抵抗性及び穂発芽性が「あきたこまち」より劣ることから、適期防除に努めるとともに、適期刈り取りに努める。
[具体的データ]
(佐藤健介)
[その他]
- 研究課題名
- 水稲直播用品種と高品質加工用米品種の開発、同(II)
- 地域で流通する加工用米を用いたトレーサビリティー清酒「まるごと秋田清酒」の開発と販路開拓
- 予算区分
- 2008 〜 2013 年
- 研究期間
- 県単、受託
- 研究担当者
- 佐藤健介、小玉郁子、川本朋彦、加藤和直、橋竜一、佐藤雄幸
- 発表論文等
- 品種登録出願2013 年9月18日 出願番号 第285385 号