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多収で極大粒の飼料用糯米品種「山形糯110号」の育成

[要約]

「山形糯110号」は“中生の晩”の糯種で、やや長稈、草型は“偏穂重型”である。玄米千粒重が「ヒメノモチ」より7g以上大きく、収量性が20%以上多収である。極大粒で主食用品種との識別性があることから、飼料用糯米に適する。

[キーワード]

イネ、山形糯110号、極大粒、多収、識別性

[担当]

山形県農業総合研究センター水田農業試験場・水稲部

[代表連絡先]

電話0235-64-2100

[区分]

東北農業・稲(稲品種)

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

水稲全体の作付面積が減少する中、飼料用イネなど家畜の餌としての水稲の利用は年々高まってきている。耕畜連携の様々な取組みが行われている中、糯米を給与した牛でブランド化を図っている地域がある。しかし、現在主として給餌している「ヒメノモチ」は飼料用としては収量性が十分ではない。また生産現場からは主食用品種との識別性がある飼料用糯米品種が要望されていた。このため、多収で主食用品種との識別性があり、山形県でも栽培可能な飼料用糯米品種を育成する。

[成果の内容・特徴]

  1. 多収で、主食用品種との識別性がある飼料用糯米の育成を目標に、多収の糯種「たつこもち」を母、長楕円形で極大粒の「オオチカラ」を父として、2001年に人工交配し、その後代から育成した品種である(表1)。
  2. 「ヒメノモチ」より出穂期は8日、成熟期は9〜11日遅く、育成地では“中生の晩”に属する(表1)。
  3. 草型は“偏穂重型”で、「ヒメノモチ」より稈長は長く“やや長稈”、穂長は並、穂数は並〜やや多い。耐倒伏性は「ヒメノモチ」並の“中”である(表1)。
  4. 「ヒメノモチ」に比べ、全重、玄米重が20%以上多く、玄米千粒重は7g以上大きい(表1図1)。
  5. いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia,Pik”と推定され、圃場抵抗性は、葉いもち、穂いもち、ともに“やや強”である。耐冷性は“中”、穂発芽性は“やや易”である(表1)。
  6. 成熟期のふ先色は“褐”である(表1)。極大粒で玄米が大きく長いことから、主食用品種との識別性がある(写真1)。玄米品質は「ヒメノモチ」に劣る。

[普及のための参考情報]

  1. 普及対象
    ・山形県内の飼料用米生産者など
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等
    ・普及予定地域は山形県内平坦〜中山間地域で、普及予定面積は20haである。
  3. その他
    ・栽培上の留意点は、稈長が“やや長稈”で耐倒伏性が“中”であることから、極端な多肥栽培は避ける。また、耐冷性が“中”なので、穂孕期が低温になる場合には深水管理などの対応をとる。

[具体的データ]

(山形県農業総合研究センター水田農業試験場)

[その他]

研究課題名
第II期地域特産型水稲品種の育成
予算区分
県単
研究期間
2001〜2010年度
研究担当者
阿部洋平、中場勝、本間猛俊、後藤元、結城和博、佐野智義、佐藤久実、渡部幸一郎、水戸部昌樹、西村(森谷)真紀子、櫻田博、宮野斉、齋藤信弥、齋藤久美
発表論文等
1) 阿部ら(2011)東北農業研究64:5〜6
2) 阿部ら(2014)山形農業研報6:1〜22