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大豆圃場における難防除雑草アレチウリの総合的防除体系
[要約]
大豆圃場のアレチウリは、大豆生育前期(大豆本葉2〜5葉期頃)の手取り除草と効果の高い土壌処理型除草剤、適期のベンタゾン液剤処理、茎葉処理型除草剤の畦間・株間処理を組み合わせた総合的防除体系により、残草量を大幅に低減することができる。
[キーワード]
大豆、アレチウリ、総合的防除、手取り除草
[担当]
宮城県古川農業試験場・水田利用部
[代表連絡先]
電話0229-26-5106
[区分]
東北農業・畑作物(畑作物栽培)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
近年宮城県において、難防除雑草であるアレチウリの耕地周辺部及び大豆圃場への侵入が拡大しており、対策が急務となっている。現在、大豆圃場においてアレチウリが発生した場合は手取り除草以外の有効な防除法がない。アレチウリはつる性で大豆に複雑に絡みつくこと、果実には鋭い刺が密生することなどから、多発した場合には手取り除草も困難となり、収穫皆無となる事例もある。そこで、本研究では、除草剤と耕種的管理法を組み合わせたアレチウリの総合的防除体系を開発する。
[成果の内容・特徴]
- アレチウリへの防除効果が比較的高い土壌処理型除草剤は、フルミオキサジン水和剤、DCMU水和剤であり、処理約1か月後のアレチウリ残草量を無処理対比で数%〜60%に抑制する。ただし、処理時に土壌表面の砕土率が低い場合や過乾燥状態の場合には効果が低下することがある(図1)。
- ベンタゾン液剤の防除効果は、アレチウリ本葉3〜4葉期の処理で高い。効果は気象条件で変動し、効果が発現しやすい高温多照条件の処理では、枯殺または生育抑制が可能である(図2)。
- 茎葉処理型除草剤の畦間または畦間・株間処理により、アレチウリ残草量は無処理対比で40〜70%に抑制される(図3)。防除効果が不十分となる場合の主な要因は、畦間・株間処理の時点で大型化したアレチウリが残草することであり、これらを処理前に手取り除草する必要がある。
- 大豆圃場のアレチウリは次の総合的防除体系により、慣行の防除法に比べて残草量を大幅に低減できる(図4)。
[1] 晩播(要防除期間の短縮のため)→ [2] 効果の高い土壌処理型除草剤の使用 → [3] ベンタゾン液剤 → [4] 大豆生育前期(大豆本葉2〜5葉期頃)の手取り除草→ [5] 中耕培土([4]と[5]の順序は不問)→ [6] 茎葉処理型除草剤の畦間・株間処理
[普及のための参考情報]
- 普及対象:大豆生産者、大豆栽培指導者
- 普及予定地域:アレチウリ発生地域
- その他
- アレチウリは、大豆茎葉による遮光で出芽や初期生育が抑制されることから、大豆自体の生育を良好にするとより効果的である。
- 本防除体系では、要防除期間短縮の観点から晩播を推奨するが、大豆茎葉による遮光効果を確保するため、極端な晩播は避けること。
- 土壌処理型除草剤は土壌表面の砕土率を高め、過乾燥時を避けて処理することが望ましい。
- ベンタゾン液剤は、大豆の茎葉が繁茂してくるとアレチウリに薬液が付着しづらくなるため、大豆本葉2〜3葉期頃に処理する。ただし、ベンタゾン液剤への感受性が高い大豆品種においては、薬害に注意すること。
- 本防除体系は、宮城県北部における防除試験から得られた知見を基にしている。
- 本防除体系の内容は引き続き検討中であり、今後新たな知見が得られ次第順次改善していく予定である。
[具体的データ]
(宮城県古川農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 大規模水田農業地帯における総合的雑草管理システムの構築
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2012〜2014年度
- 研究担当者
- 安藤慎一朗、三上綾子、高橋智恵子、大川茂範、石橋まゆ、内海翔太、阿部脩平(宮城古川農試)
- 発表論文等
- 安藤ら(2013)雑草研究、58(別):58