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ブドウ「シャインマスカット」の穂軸からの水分補給による長期貯蔵技術

[要約]

収穫後のブドウ「シャインマスカット」の穂軸に水を入れたプラスチック容器を装着して、0.5度C設定の送風式普通冷蔵庫で貯蔵すると、穂軸の褐変、萎凋が抑えられ2〜4ヶ月間、商品性が保たれる。

[キーワード]

ブドウ、シャインマスカット、水分補給、長期貯蔵

[担当]

山形県農業総合研究センター園芸試験場・果樹部

[代表連絡先]

電話0237-84-4125

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

ブドウ「シャインマスカット」は比較的貯蔵性が高い品種であるが、普通冷蔵庫での貯蔵では2ヶ月が限界であることから、年末・年始の出荷、あるいは「春節」時期の輸出等、新たな販売戦略を視野に入れた長期貯蔵技術について検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. ブドウ「シャインマスカット」において、収穫後に水を入れたプラスチック容器(商品名:フレッシュホルダー 特許2962350号)を穂軸に装着し、0.5度C設定の送風式普通冷蔵庫で貯蔵する(図1)と、穂軸の褐変、萎凋が抑えられ2〜4ヶ月の長期貯蔵が可能となる(図3)。貯蔵後の果房は、収穫直後と比較してマスカット香がやや少なく感じられるが、食味や食感は十分な商品性を有する。
  2. 貯蔵には障害のない健全な果房を用い、底部に緩衝資材を敷いたコンテナに果実袋に入れたまま静置し、上には新聞紙を被せる(図2)。果房に直接冷気があたらないように、冷却ファンとの間にビニール等で仕切りを設ける。
  3. 目標とする貯蔵期間が2ヶ月程度までの場合は、容量14ml(長さ60mm 太さ20mm 軸穴径3.5mm)の容器を用い、貯蔵期間が2ヶ月以上の場合は容量28ml(長さ120mm 太さ20mm 軸穴径4.0mm)の容器を用いて貯蔵することで穂軸の萎凋が抑えられる。なお、14mlでは約40日後に、28mlでは約80日後に吸水が完了する(データ省略)。
  4. プラスチック容器への穂軸の挿入は、容器底部まで深く挿入すると貯蔵中のオセ果(損傷果)の発生が多くなるため、2〜3cm程度の部分的な挿入にとどめる(図3)。また、穂軸が水面から離れるのを防ぐため、容器底部が上向きになるようにする。
  5. 長期貯蔵用の果房は、適期に収穫した果房(山形県作成シャインマスカットカラーチャート「2」〜「3」)とし、果皮の緑色が濃い果房(やや未熟)では、果粒内の水分含量が多いことからオセ果(損傷果)等の障害果粒発生や灰色かび病等の腐敗果粒の発生が多い傾向があり、果皮の黄化が進んだもの(やや過熟)では貯蔵中に果粒が軟化しやすい(図4)。

[普及のための参考情報]

  1. 普及対象:ブドウ「シャインマスカット」生産者及び出荷組織、流通関係者
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:ブドウ「シャインマスカット」作付け地域(約700ha:2014年推計)
  3. その他:

[具体的データ]

(米野智弥、今部恵里、明石秀也、仲條誉志幸、須藤佐藏)

[その他]

研究課題名
ブドウ「シャインマスカット」周年供給に向けた越年出荷技術および輸出実証
予算区分
受託(被災地の早期復興に資する果樹生産・利用技術の実証研究委託事業)
研究期間
平成24〜26年度
研究担当者
米野智弥、今部恵里、明石秀也、仲條誉志幸、須藤佐藏
発表論文等
園芸学会平成26年度秋季大会口頭発表(園芸学研究第13巻別冊2・p149)