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油脂TBA試験紙を用いた牛肉脂質過酸化度の測定と脂質安定性の予測

[要約]

脂質過酸化を促進する貯蔵条件および油脂TBA試験紙を用いて簡易に測定した牛肉脂質過酸化度から冷蔵貯蔵時の消費期限における脂質安定性を予測することができる。

[キーワード]

牛肉、貯蔵、油脂TBA試験紙、脂質過酸化度、脂質安定性

[担当]

東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域

[代表連絡先]

電話019-643-3541

[区分]

東北農業・畜産飼料作

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

牛肉を貯蔵する際に生じる香りや色調の劣化は脂質過酸化が原因であり、脂質過酸化に対する安定性、すなわち脂質安定性は牛肉の貯蔵性を評価する上で必要な指標である。しかしながら、牛肉の脂質安定性を評価するためには、実験室での操作を想定した貯蔵試験と脂質過酸化度測定を必要とする。そこで、流通段階での利用を目指し、貯蔵条件および市販の油脂TBA試験紙を用いて、簡易かつ迅速に牛肉脂質安定性を予測するための方法を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. 貯蔵方法が異なる(処理1:貯蔵なし、処理2:4度Cで3日間貯蔵、処理3:30度Cで1日間貯蔵)牛肉ミンチ試料の脂質過酸化度を既存のチオバルビツール酸(TBA)法と油脂TBA試験紙を用いた方法で測定する。図1のとおり、TBA法から得られるTBA反応性物質(TBARS)値は、油脂TBA試験紙のa*値と有意な相関を示すことから、油脂TBA試験紙は牛肉の脂質過酸化度の測定にも利用することが可能である。
  2. 図2のとおり、処理2のTBARS値は処理3のTBARS値と有意な相関を示すことから、30度Cで1日間貯蔵した牛肉ミンチ試料のTBARS値から、冷蔵貯蔵時の消費期限(4度C、3日)におけるTBARS値を予測することが可能である。
  3. 図3のとおり、処理2のTBARS値は処理3の油脂TBA試験紙A*値と有意な相関を示すことから、30度Cで1日間貯蔵した牛肉ミンチ試料の油脂TBA試験紙A*値から、冷蔵貯蔵時の消費期限(4度C、3日)におけるTBARS値を予測することがある程度可能である。
  4. 上記1から3の成果より以下の方法で予測が出来る。すなわち、牛肉ミンチ試料に抗生物質(クロロテトラサイクリン塩酸塩、30ppm)を添加し、混和する。密閉容器内に入れ、30度Cで1日間貯蔵する。貯蔵後、牛肉ミンチ試料30(w/v)%となるように1.15%塩化カリウム水溶液を添加し、ホモジネートを調製する。市販の油脂TBA試験紙(柴田科学)にホモジネートを浸潤させ、使用手順に従い2分間加熱した後、10秒間放冷する。試験紙の赤色値(A*値)から、冷蔵貯蔵時の消費期限(4度C、3日)における脂質過酸化度を推定する(図4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 脂質酸化臭と関連付けるためのデータとして利用できる。
  2. 冷蔵貯蔵時の消費期限(4度C、3日間)は、牛挽肉の可食期間の目安(中央畜産会. 2005.期限表示のための試験方法ガイドライン〔食肉(食肉加工品(半製品)を含む.)〕)に基づいたものである。
  3. 牛肉ミンチ試料に添加する抗生物質は、微生物繁殖の影響を排除するためのものである。

[具体的データ]

(今成麻衣)

[その他]

研究課題名
赤身牛肉の貯蔵および品質評価技術の確立
放牧等粗飼料多給肥育牛肉のフレーバー特性の解明
予算区分
交付金、競争的資金(農食事業)
研究期間
2011〜2014年度
研究担当者
今成麻衣、柴 伸弥、米内美晴、渡邊 彰
発表論文等
今成ら(2014)日畜会報、85(4):549-552