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ポット苗田植機を汎用利用した雑穀の畑移植技術
[要約]
水稲用448穴ポット苗田植機を雑穀の畑移植に汎用利用するための改良部位は、移植爪、泥取りブラシ、覆土輪、苗押出座の4点であり、他の移植機に比べて安価に精度の高い雑穀の機械移植作業ができる。
[キーワード]
ポット苗田植機、汎用利用、傾斜地、棚置き育苗
[担当]
岩手県農業研究センター県北農業研究所・作物研究室
[代表連絡先]
電話0195-47-1070
[区分]
東北農業・農業生産基盤(作業技術)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
雑穀の畑栽培は直播栽培が主であるが、雑草の多発により減収することも多い。一方、移植栽培は、苗を移植するために早期から精度の高い中耕除草ができ、雑草の発生を抑えて収量確保がしやすいが、育苗および移植に多くの時間と経費を要する。そこで、既に普及している水稲用の田植機を畑地(傾斜地)でも汎用利用し、安価に作業能率の高い雑穀の機械移植技術を開発する。
[成果の内容・特徴]
- 448穴ポット苗田植機(M社製、歩行型、ロータリ式)の以下の4部位を改良(図1)することで、畑地での雑穀の移植精度が高まる。なお、改良部品を脱着することにより、水稲と雑穀で改良機を汎用利用できる。移植はロータリ耕後に行う。
ア.移植爪:爪先端に角度をつけ、ラッカー及びシリコンを表面塗装し、泥が付着しないよう改良した移植爪を装着する。シリコンは移植作業時に毎回塗布する。
イ.移植爪の泥を取るブラシ:幅7cm程度の既製品ブラシを新たに装着する。
ウ.覆土輪:植付けた苗の根鉢露出を防止するため、植付けた苗を挟む位置に覆土用の金属円盤などを新たに装着する。
エ.苗押出座上の押出棒:雑穀栽培の条間に合わせるため、苗押出座を別途準備し、苗押出棒14本のうち片側7本を切断して7本を残す。
- 改良機の操作は、水平制御機能は稼働させないこと以外は、水田での操作と同様に行う。平地(斜度0°)で正常に移植される株の割合は、改良前の45.5%から95.8%以上に向上する(表1)。
- 機械移植に適した苗は、地床に苗底を接触させない棚置き育苗により作出される。雑穀の作目で播種粒数は異なり、アワでは1穴あたり4〜6粒播種し、育苗期間は約20〜30日である(表1)。また、苗押出棒の切断により、ポット苗は半分が移植されずに残った状態で出てくるので、再度向きを変えて田植え機にセットして移植する。
- 傾斜地での走行性は、田植機走行部のフロートの作用により一般的な畑用作業機に比べて向上し、斜度6°では下りでやや株間が広がるものの収量に影響はない。
斜度8°〜10°では、斜度0°に比べて栽植密度は減少するが、斜度6°と同程度である。しかし、斜度が上がると、上り下りの株間の差が大きくなるので留意する(表2)。
- 改良機は、雑穀を移植できる半自動移植機及びチェーンポット簡易移植器と比べ、移植条数が多く、作業速度が速いため、より効率的に移植作業ができる(表3)。
[普及のための参考情報]
- 普及対象:雑穀生産農家
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:2017年度を目途に、岩手県北部を中心に普及しているポット苗田植機の10%程度(10台程度)で汎用利用する
- その他:
ア.改良した移植爪は、市販化に向けて検討中である。なお、覆土輪は溝切りディスクを使用し、ブラシ、ラッカー、シリコンスプレーは既製品である。
イ.アワ、キビ、ヒエ、タカキビ、アマランサス、エゴマについては、株間調整することで改良機を用いて移植できる。
[具体的データ]
(岩手県農業研究センター県北農業研究所)
[その他]
- 研究課題名
- 雑穀の機械移植法の開発
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2012〜2014年度
- 研究担当者
- 中西商量
- 発表論文等
- 中西商量、農業食料工学会東北支部報No.61:41-44
- 中西商量、特産種苗No.18:33-40
- 中西商量、機械化農業2015.2月号:9-14