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フィンランドSiilinjarvi 産金雲母施用は玄米への放射性セシウム移行を低減する

[要約]

フィンランドSiilinjarvi 産金雲母の施用は土壌のカリ可給性及び放射性セシウムの選択固定能を高め、玄米への放射性セシウム移行を低減する。金雲母の移行低減作用はゼオライトより高く、移行低減資材として有望である。

[キーワード]

移行低減資材、非交換性カリ、水稲、放射性セシウム濃度、金雲母

[担当]

農研機構東北農業研究センター・農業放射線研究センター

[代表連絡先]

電話024-593-6176

[区分]

東北農業・生産環境(土壌肥料)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

雲母は主要な造岩鉱物であり、土壌中にも広く分布している。雲母はさらに、金雲母や白雲母などの鉱物種に細分され、工業原料として各地で採掘されている。雲母は全重量の10%程度のカリを含み、そのカリは酢酸アンモニウムでは抽出されない「非交換性カリ」であるが、植物によるカリ吸収に伴い可給化することが知られている。フィンランドSiilinjarvi 産金雲母は安価で流通しており、有機農業向けのカリ肥料としても利用されている。金雲母は土壌中で徐々にカリを放出し、放射性セシウム選択固定能の高いバーミキュライトへと変化し、土壌のカリ可給性と放射性セシウム固定能を高める効果が期待される。そこで、金雲母の放射性セシウム移行低減資材としての効果を評価する。

[成果の内容・特徴]

  1. 金雲母の施用により、玄米への放射性セシウム移行係数は顕著に低下する(図1)。その効果は移行低減資材として使用されるゼオライトより高い(図1)。
  2. 栽培前土壌の交換性カリ含量と放射性セシウム移行係数の間には相関が見られず(図2)、非交換性カリを抽出可能なテトラフェニルほう酸(TPB)抽出カリ含量と放射性セシウム移行係数の間に強い負の相関が見られる(図3)。
  3. 土壌の1M 酢酸アンモニウム抽出による交換性放射性セシウム濃度は、水稲の栽培により多くの場合は増加するが、金雲母を土壌の1wt%施用した場合は減少する(図4)。金雲母がカリを放出することによりバーミキュライトへと変化し、放射性セシウムを固定したものと考えられる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 金雲母はカリを放出後バーミキュライトへと変化し、高いCEC や放射性セシウム選択固定能を示すため、土壌のCEC が低くカリ溶脱の激しい圃場や、土壌の放射性セシウム選択固定能が低い圃場で高い移行低減効果が期待される。
  2. 本研究で用いた金雲母はフィンランドSiilinjarvi 産であり、土壌は137Cs 濃度5,200 Bq/kgの灰色低地土である。雲母の性質は産地により大きく異なるため、その他の産地の金雲 母では移行低減効果が異なる可能性がある。
  3. Siilinjarvi 産雲母の価格は、2016 年1月時点で移行低減資材として用いられるゼオライトの約2.5 倍であり、カリ含量はゼオライトの5〜6倍である。
  4. 金雲母を施用した土壌のカリ可給性は、酢酸アンモニウム抽出では評価できず、TPB抽出により評価する必要がある。

[具体的データ]

(江口哲也、石川哲也、太田健)

[その他]

研究課題名
農作物等における放射性物質の移行動態の解明と移行制御技術の開発
予算区分
交付金
研究期間
2013〜2015 年度
研究担当者
江口哲也、太田健、石川哲也、松波寿弥、久保堅司、信濃卓郎
発表論文等
Eguchi T. et al. (2015) J. Environ. Radioact.147:33-42