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薪ボイラーは空気供給条件の改善で木質および草本系ペレットを燃料利用できる

[要約]

薪ボイラーでペレットを燃料とする際には、簡易加工した鉄板で炉内の燃料位置を調整することで、燃焼に必要な空気供給が確保できる。炉内燃料上への燃焼制御シート(断熱材)設置により2段階燃焼に近い燃焼状態となり、煙突からの煙発生時間を短縮できる。

[キーワード]

バイオマス、直接燃焼、薪ボイラー、ペレット、ジャイアントミスカンサス

[担当]

農研機構東北農業研究センター・生産基盤研究領域

[代表連絡先]

電話019-643-3433

[区分]

東北農業・農業生産基盤(作業技術)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

バイオマス燃料の農業利用では、ハウス夜間暖房や穀物乾燥のように、その都度、数時間毎の利用が多く、様々な形態の燃料が少量ずつ供給されることが想定される。薪ボイラーはバッチ式ではあるが、燃料形状の許容範囲が広く、装置の構造も単純で活用が期待できる。ここではペレット燃料を薪ボイラーで燃料利用する際に、薪とペレットとの燃料形状の違いに起因する燃焼上の問題に対する改善手法を提示する。

[成果の内容・特徴]

  1. 薪を想定した設計である薪ボイラー炉内では、ペレット燃料は炉の隅など燃焼空気が供給されにくい部分に燃え残ってしまう。そこで、燃料が隅に残らないよう燃料調整板(図1)を設置することで、有効運転時間、出力、効率を改善できる(表1:1-3、1-4)。
  2. ペレット燃料では、薪の場合より煙が長く発生する傾向があるが(表1:1-1、1-4、表2:2-1)、炉内のペレット燃料上に高温用断熱材である燃焼制御シート(図1)を設置することで、2段階燃焼に近い燃焼に改善され、煙の発生する時間を短縮することができる(表2:2-1、2-2)。
  3. ペレット燃料では、薪の場合より燃焼時間が短い傾向があるが、着火位置を炉内の空気の下流側(供試ボイラーでは上部奥側の煙突側)とすると、上流側に着火するより燃焼時間が長くすることができる(表1:1-2、1-3)。
  4. 草本系であるジャイアントミスカンサス(GM)ペレットは、木質ペレットと比較して、煙の発生時間が長いが、薪ボイラーでの燃料利用に際して大きな問題点は無かった(表2:2-2、2-3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 供試ボイラー(ATO 製N-220NSB)は炉内下部鉄管から強制空気供給を行う。薪は強制空気供給が無くても燃焼できるが、ペレット燃料は強制空気供給が無いと内部まで空気が供給されず燃焼できない。また、温湯加熱のため、炉壁は、炉上部の温湯タンクとつながる二重構造(水ジャッケット)である。灰の蓄積により下部鉄管からの強制空気供給に支障をきたした場合は、適宜、スコップなどで灰を取り除く。
  2. 燃料調整板は鉄板の切断、折曲のみの簡易な加工により製作し、燃焼制御シートは、耐熱温度1260℃のもの(日本サーマルセラミックス製SC ブランケット1260、密度:130kg/立方メートル)を用いた。両者とも使用時に炉内に置くだけであるため、通常の薪ボイラーとして利用する際には撤去可能である。
  3. 供試ボイラーは、薪ボイラー熱源の循環式穀物乾燥機(金井ら、農機誌72(3)、297-299)の一部であり、実験に際しては循環式乾燥機を排熱装置として利用した。仕様上、薪ボイラーの平均熱源能力43.4 kW は、接続された循環式穀物乾燥機の純正バーナー(45.9 kW)と同等の能力であり、穀物乾燥可能な装置である。

[具体的データ]

(金井源太)

[その他]

研究課題名
未利用有機質資源のエネルギー変換システムの開発
予算区分
交付金
研究期間
2011-2015 年度
研究担当者
金井源太
発表論文等
金井ら(2016)農業施設、印刷中