研究所トップ研究成果情報平成27年度

南会津地方の郷土食 ‘米あめ’の時間短縮加工技術の開発

[要約]

南会津地方の郷土食‘米あめ’は、家庭用炊飯器の保温モードを活用し4時間で糖化できる。さらにもち米粉では2時間で糖化できる。これにより、従来、約24 時間を要した米あめの糖化までの工程は6時間以下となり、家庭でも簡単に加工することが可能である。

[キーワード]

南会津、郷土食、伝統食、米あめ、簡易

[担当]

福島県農業総合センター生産環境部流通加工科

[代表連絡先]

電話024-958-1719

[区分]

東北農業・農業生産基盤(流通加工)

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

かつて南会津地方では各家庭でもち米から麦芽糖を生成し、「あめ」として近隣にふるまう「あめよばれ」という風習があった。近年、この「あめ」の加工には労力と時間を要することなどから若い世代への伝承が難しくなってきている。

そこで、郷土食あるいは伝統食として後世への伝承していくため、加工工程の短縮及び簡易化となる加工技術を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. 現地事例調査により、ア. 製造にかかる労力・作業時間が負担である、イ. アの理由及び核家族化や高齢世帯が多くなり各家庭での加工は困難、ウ. 多量加工した場合の廃棄物( 絞りカス) の処理が問題、エ. 大麦の入手先が限られている、とした慣行の加工工程(図1) に関する4 つの課題が明らかとなった。なお、大麦の入手の課題については、現地普及指導員が栽培者の確保等にあたる。
  2. 人肌よりも高い温度と伝承され布団で囲う方法の糖化温度を40℃ 、指を入れて「の」の字がやっと書けるくらいの温度と伝承されている糖化温度を60℃ とし、それぞれの伝承温度で8 時間以上保温とされている糖化工程は、60℃ で4 時間保温することで可能であり、慣行工程から4 時間短縮できる(表1図1) 。
  3. 安定した60℃の保温には家庭用炊飯器の保温モードを活用することができ、もち米100g、大麦麦芽10g、水500g を基準とした場合、80Brix%で約85cc の米あめが得られ、少量の加工が可能である。ただし、炊飯器はフタを開放して使用する。
  4. もち米粉をあらかじめ充分加熱糊化し、糖化することで絞りカスは減容化できる。絞りカスは水分を含むため、粉体と混合しやすく菓子加工への可能性がある。さらに、もち米粉は60℃ ・2 時間で糖化でき、生成した米あめの甘味成分にはマルトースが約50% 含まれる(表2図2) 。
  5. 材料とするもち米粉の5-10% を野菜粉末等に代替し糖化することで米あめに香り、色つけをすることができ差別化及び商品化が期待できる(表3図3)。

[普及のための参考情報]

  1. 普及対象:福島県南会津地域居住者、米あめ加工事業者等
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:福島県南会津全域
  3. その他:5.5 合炊飯器を利用しもち米(精米)を材料とする場合は、1時間程度浸漬時間をおき、300g までの炊飯とする。麦芽粉末をそのままもち米等に振り入れることも可能だが、絞りカスを食用として利用する場合は、麦芽粉末を布等で包み40℃程度の温湯の中で揉みだした液体を利用する。その場合は、大麦麦芽10g に対し温湯100cc とする。

[具体的データ]

(國分計恵子)

[その他]

研究課題名
郷土食・伝統食を基礎とした商品化技術の開発
予算区分
県単
研究期間
2015 年
研究担当者
國分計恵子、関澤春仁、長澤梓
発表論文等