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東北地域を対象とした水稲の高温耐性検定基準品種の選定

[要約]

東北地域における水稲品種・系統の高温耐性を評価するため、ガラス温室で高温条件の栽培を行い、高温耐性の基準となる品種・系統を選定した。検定基準品種は登熟期間の気温条件が異なる熟期に分けた15 品種・系統である。

[キーワード]

イネ、検定基準品種、高温耐性、東北地域

[担当]

農研機構東北農業研究センター・水田作研究領域

[代表連絡先]

電話0187-66-2773

[区分]

東北農業・稲(稲品種)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

水稲の玄米は、出穂後の登熟期間に気温が著しく高くなると、背白、基白等の白未熟粒が多く発生し、品質が低下することが知られている。全国的に高温となった2010 年は、岩手県を除く東北各県で1等米比率は70〜75%となり、過去10 年の平均87%を大きく下回った。そのため、東北地域に適した高温耐性の強い水稲品種の育成が求められている。高温耐性品種を育成する上では、高温耐性を検定する基準となる品種が必要である。そこで、東北地域を対象とした高温耐性検定基準品種を選定する。

[成果の内容・特徴]

  1. 選定した検定基準品種は、“かなり早”熟期では、「ふ系227 号」を“やや強”、「むつほまれ」を“中”、「駒の舞」を“弱”、“早”熟期では、「ふさおとめ」を“強”、「里のうた」「こころまち」を“やや強”、「あきたこまち」を“中”、「初星」を“弱”、“中”熟期では、「みねはるか」を“やや強”、「ひとめぼれ」「はえぬき」を“中”、「ササニシキ」を“弱”、“晩”熟期では、「笑みの絆」を“強”、「つや姫」を“やや強”、「コシヒカリ」を“中”とした15 品種・系統である(表1)。
  2. 検定基準品種は、供試した24 品種・系統の中から、玄米の整粒率および白未熟粒率は、年次、試験地により数値が大きく異なるため、試験地毎に強(3)、やや強(4)、中(5)、やや弱(6)、弱(7)の階級区分により高温耐性を判定した結果をもとに選定している(表2)。
  3. 試験は、東北地域の6試験地において24 品種・系統をガラス温室(出穂後20 日間の平均気温は28.0℃〜29.1℃)で栽培して実施した。この条件下では、玄米の整粒率は16%〜51%と低く、白未熟粒率は17%〜52%と高い(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 東北地域に栽培されている品種を優先して基準品種を選定している。東北地域の品種・系統について高温耐性を検定できる。
  2. 東北農業研究センター(秋田県大仙市)、青森県産業技術センター農林総合研究所藤坂稲作部(青森県十和田市)、宮城県古川農業試験場(宮城県大崎市)、秋田県農業試験場(秋田県秋田市)、山形県農業総合研究センター水田農業試験場(山形県鶴岡市)、福島県農業総合センター(福島県郡山市)の6箇所で2011 年から2013 年の3年間実施した結果である。
  3. ガラス温室を利用したことは共通するが、移植日、施肥量、加温条件は試験地により異なる。使用している穀粒判別器の機種も試験地により異なる。
  4. 乳白粒、腹白粒(背白粒含む)、基部未熟粒の合計を白未熟粒と計測している。
  5. “やや弱”に該当する品種、“かなり早”熟期、“中”熟期の“強”に該当する品種、“晩”熟期の“弱”に該当する品種が無いため、今後、基準品種の追加・見直しを検討する必要がある。

[具体的データ]

(太田久稔、梶亮太)

[その他]

研究課題名
米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
予算区分
交付金
研究期間
2011〜2013 年度
研究担当者
梶亮太、太田久稔、福嶌陽、津田直人、森山茂治(青森産技セ)、今智穂美(青森産技セ)、遠藤貴司(古川農試)、中込佑介(古川農試)、佐藤浩子(古川農試)、川本朋彦(秋田農試)、加藤和直(秋田農試)、後藤元(山形農総研)、阿部洋平(山形農総研)、佐藤弘一(福島農総セ)、佐々木園子(福島農総セ)、吉田直史(福島農総セ)、大寺真史(福島農総セ)
発表論文等
梶ら(2016)東北農業研究センター研究報告、118:49-55