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ホウレンソウの高能率化に適した作業機械及び雨よけハウス設置のポイント

[要約]

雨よけホウレンソウの作業は、乗用管理機と作業機によって、作業時間を慣行手作業の1/3 以下に高能率化できる。雨よけハウスは、つま面をなくし、アーチパイプの肩の高さを確保することなど、乗用管理機による作業に適合するよう配慮して設置する。

[キーワード]

ホウレンソウ、高能率化、雨よけハウス

[担当]

岩手県農業研究センター・県北農業研究所

[代表連絡先]

電話0195-47-1070

[区分]

東北農業・野菜花き(野菜)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

雨よけホウレンソウは岩手県の重点推進品目のひとつであるが、栽培は手作業が主で労力がかかること等から年々生産額が減少しており、大規模化を進める上でも課題となっている。そこで栽培を高能率化するため、乗用管理機を中心とした機械化及びこれに適するパイプハウスの構造を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 雨よけホウレンソウは草丈が30cm 前後と高く、は種条間が狭いことから、損傷を避け、無駄なく栽培できるよう、乗用管理機は最低地上高が42cm 以上と高く、前後輪の輪距を同じにできる機種を選び、幅の狭い車輪を用いる必要がある。この乗用管理機を中心として、収穫作業は、ホウレンソウの損傷の少ない根切機TBR-12(K 社製)を用い、その作業幅120cm に合わせて、乗用管理機の輪距を110〜120cm とし、は種機は輪距より狭い100cm 幅のベッドに点播できる播種機を選定する。ブームスプレーヤはハウス幅に散布幅が合うものを選定する。これらにより、作業時間は、収穫作業が10a 当り960分と従来の手作業に比べ1/3 に短縮できる。は種は80 分/10a と約1/3、防除作業時間は10 分/10a と1/4 に短縮できる(表1図1)。
  2. 乗用管理機による作業を効率的に行うため、雨よけハウスは次の点に配慮して設置する (図2) 。
    1. つま面を無くし、往復作業を可能にする。
    2. 側面から30cm 離れた箇所のアーチパイプの肩までの高さを190cm 以上、梁の高さを200cm 以上、かん水チューブの設置位置を高さ90cm 以上とすることで、ハウス左右の不作付け部分を幅30〜40cm まで少なくできる。
    3. 間口は114cm×ベッド数+60〜80cm が目安となる。
    4. つま面が無いことで、耐風強度が弱くなる可能性があるため、風が強く当たる場所を避け、ハウス周囲に防風ネットを設置する。また、積雪期間はビニルを除去する。アーチパイプは直径25.4mm のものを用い間隔は45cm、横梁の間隔は180cmとし、筋交いを入れて補強する。また、約5m おきに「らせん杭」を打ち込んで補強する。なお、乗用管理機が効率良く旋回できるよう、ハウス前後の間隔は3.5m 以上確保する。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本成果で得られた仕様のハウスの愛称を“4Kハウス”(軽作業、規模拡大、高齢化対応、(岩手)県北振興)としている。
  2. 本成果に用いた機械及びハウスの減価償却費は約123 万円/年である (表2) 。

[具体的データ]

(岩手県農業研究センター県北農業研究所)

[その他]

研究課題名
(H27-10)生食用ホウレンソウ軽労生産システムの確立
予算区分
委託(農林水産業の革新的技術緊急展開事業)
研究期間
2015 年度
研究担当者
長嶺達也