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バラ切り花におけるSTS 前処理と後処理剤を組み合わせた品質保持

[要約]

バラ切り花は、前処理として0.05mM STS 溶液またはこれに2%グルコースを添加した溶液を室温5℃、暗条件で24 時間処理し、糖と抗菌剤を含む後処理剤を湿式輸送から消費者の観賞終了まで連続処理することにより、多くの品種で品質保持効果が認められる。

[キーワード]

バラ、品質保持、STS(チオ硫酸銀錯体)、前処理、後処理

[担当]

山形県農業総合研究センター園芸試験場・野菜花き部

[代表連絡先]

電話0237-84-4125

[区分]

東北農業・野菜花き(花き)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

バラ切り花は高温条件下でベントネック等の障害により観賞期間が短くなりやすく、日持ち保証販売に対応するためには、その対策が課題となっている。

このため、高温期でも7日以上日持ち可能な品質保持方法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. バラ切り花のSTS 前処理と後処理剤を組み合わせた品質保持方法は以下のとおり。
    1. 前処理:0.05mM STS(チオ硫酸銀錯体)溶液またはこれに2%グルコースを添加した溶液を用いて、室温5℃、暗条件で24 時間処理する。
    2. 輸送から消費者の観賞:湿式輸送とし、糖と抗菌剤を含む後処理剤を連続処理する。
  2. この品質保持方法の観賞日数は、「サムライ08」を供試した場合、室温30℃では蒸留水連続処理が約6日、後処理剤の連続処理が約9日であるのに対して、本法は10 日程度となり、高温条件での品質保持効果が高い(表1)。
  3. 20 品種を供試して、0.05mM STS と2%グルコースの混合溶液を前処理し、室温25℃条件の観賞日数は7〜15 日となり、10 品種で後処理剤の連続処理よりも有意に長くなり、残り10 品種で同等となり、多くの品種で花弁の展開が進み花弁の離脱が遅れる。また、この品質保持方法による薬害はみられない(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 日持ち性の優れる切り花による差別化販売および日持ち保証販売に利用できる。
  2. 本法はエチレン感受性品種において高い品質保持効果が期待でき、STS の前処理だけでも効果が認められる。
  3. 前処理以後は糖と抗菌剤を含む後処理剤を利用することが前提となる。市販されている大手5社の消費者用後処理剤の品質保持効果は概ね同程度であり、利用可能である。
  4. 初めて本法を利用する品種では、事前試験を行って効果や薬害の有無を確認する。なお、STS 濃度が高い場合や吸収量が多い場合、開花不全や濃度障害を起こす場合があるので注意する。
  5. 切り花新鮮重100g(切り花長60cm 程度で3〜4本相当)当たりの前処理から輸送まで品質保持剤のコストは、消費者用後処理剤を連続処理した場合は2.8 円、0.05mM STSと消費者用後処理剤の場合は1.7 円、0.05mM STS と2%グルコースの溶液と消費者用後処理剤を用いた場合は2.0 円となる。
  6. 出荷調整のため切り花を3日程度貯蔵する場合、STS の前処理は貯蔵開始日または終了日の24 時間でも同等の品質保持効果が得られる。

[具体的データ]

(山形県)

[その他]

研究課題名
花き主要品目の日持ち保証販売に対応した品質保持体系の確立
予算区分
国庫(国産花きイノベーション推進事業 花き日持ち性向上対策実証事業)
研究期間
2014 年度
研究担当者
西村林太郎、佐藤貴裕