順化前の茎頂培養苗を用いたグラジオラスへのウイルス接種法


[要約]
グラジオラスでは木子や球茎から生長した苗へのウイルス接種が極めて困難であるが、茎頂培養によりウイルスフリー化した順化前の培養中の幼苗を利用するとウイルスの感染率が高まり、効率的に接種できる。
京都府農業資源研究センター・応用研究部
[連絡先] 0774-93-3527
[部会名] 生産環境(病害虫)、生物工学
[専 門] 作物病害
[対 象] 花き類
[分 類] 研究

[背景・ねらい]
 グラジオラスのほとんどは、キュウリモザイクウイルス(CMV)やインゲンマメ黄斑モザイクウイルス(BYMV)に感染しているため、ウイルスフリー化と弱毒ウイルスの利用が望まれている。グラジオラスはウイルス接種が極めて難しい植物の一つであるため、弱毒ウイルスの開発と実用化には接種効率の向上が不可欠である。そこで、グラジオラスに適用できるウイルス接種法を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. CMVの接種は茎頂培養によってウイルスフリー化した順化前の培養中の幼苗に行う。発根培地における培養期間が2カ月未満の品種ガリレイでは、ウイルス濃度0.1〜1mg/ml で100%の株が感染するが、木子から生長した幼苗は全く感染しない(表1)。
  2. グラジオラスの茎頂培養は常法による。
  3. ウイルスを接種する幼苗は、発根培地で生育中に小葉片を採取し、ELISA法によりCMVとBYMVの陰性反応を確認する。
  4. 培養瓶から取り出した培養苗の根部を水洗して付着した培地を取り除く。
  5. カーボランダムを振りかけた葉にCMVの純化または部分純化ウイルス液を1株当たり10〜20μl 滴下し、パラフィルムを巻いた指で軽く3、4回擦る。接種した苗は直ちに水洗した後、培養瓶内のバーミキュライトに移植し、20℃・15,000 lux・16時間日長で約2週間育成する(図1)。
  6. これらをELISA検定してウイルスの感染を調べた後、通常の順化処理を行う。

[成果の活用面・留意点]

  1. 発根培地での培養期間が長くなると葉が硬化し、感染率が低下する。
  2. BYMVにおいても、順化前の培養苗に超遠心分離後の濃縮ウイルス液を接種すると、ほぼ100%の感染率が得られる。
  3. この順化前の組織培養苗を利用したウイルス接種法は、他の接種が難しい植物にも適用できる可能性がある。

[その他]
研究課題名:弱毒ウイルスによるグラジオラスウイルス病防除技術の開発
予算区分 :地域先端
研究期間 :平成11年度(平成9〜13年)
研究担当者:中薗栄子、小坂能尚
発表論文等:グラジオラスにおけるキュウリモザイクウイルス弱毒株CM95の干渉効果の早期判定法、日本植物病理学会報、64、626、1998.

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