[成果情報名]

乳成分を維持する稲発酵粗飼料の適正給与量

[要約]出穂後40日目に刈取りし調製した飼料イネ『アケノホシ』の稲発酵粗飼料は、乳量や乳蛋白質率等の無脂固形分分画の値を維持するためには、乳量35kg前後の乳牛で乾物6.0〜6.5kg/日程度が適正給与量である。
[キーワード]動物栄養、乳牛、飼料イネ、稲発酵粗飼料、乳量、乳蛋白質率、無脂固形
[担当]広島畜技セ・飼養技術部
[連絡先]08247-4-0331
[区分]近畿中国四国農業・畜産草地
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 転換田の活用による自給粗飼料の増産が求められ、転作作物として特に,飼料イネに耕種農家の関心が寄せられ、これらの栽培が始まっている。しかし、畜産農家においては、飼料イネはこれまで飼料として乳牛に給与されておらず、高泌乳牛における乳生産への影響が不明である。そこで、混合飼料(TMR)原料としての稲発酵粗飼料の飼料特性を把握し、高泌乳牛への適正給与量を検討する。

[成果の内容・特徴]

    稲発酵粗飼料(飼料イネWCS)は、アケノホシを用い、出穂後40日に刈取り調製したものを用いた。粗飼料として飼料イネWCSの乾物混合割合を26%(TMR26)、30%(TMR30)および35%(TMR35)としたTMR3区を調製し(表1)、分娩後50日以上の乳牛6頭を用い、1期21日で計3期63日間のラテン方格法で給与試験した。
  1. 飼料イネWCSのTMRの嗜好性は良好である。
  2. 乾物摂取量は、TMR26区で多い傾向にあるが、統計的な差は認められない(表2)。
  3. 飼料イネWCSの乾物摂取量は、6.0〜7.7kg/日の範囲である(表2)。
  4. NDF摂取量は、区間に差が認められず、NFC摂取量はTMR26区が多い(表2)。
  5. 乳量は、TMR26区がTMR35区に比較し多い(P<0.05)(表3)。
  6. 乳脂率は、TMR35区が高く、乳蛋白質率、乳糖率および無脂固形分率は、TMR26区が高い(P<0.05)(表3)。
  7. 採食速度はTMR26区が速く、咀嚼時間/乾物摂取kgはTMR26区がTMR35区に比較し短い(表4)が、第一胃内性状には問題がない。
  8. 以上から、乳量35kg前後の乳牛に対して、出穂後40日刈取りの飼料イネWCSのTMRにおける適正混合割合は26〜30%程度、乾物給与量は6.0〜6.5kg/日程度と思われる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 飼料イネWCSの混合割合が多い場合には、モミの糞中への排泄量が多く養分ロスが生じ、無脂固形分分画の値が低くなりやすいが、モミの消化性を改善できれば、さらに泌乳成績は向上すると考えられる。

[具体的データ]

表1

表2

表3

表4


[その他]
研究課題名飼料イネサイレージの調製・給与技術の開発
予算区分県単および21世紀プロジェクト委託
研究期間2001〜2003年度
研究担当者新出昭吾、城田圭子、長尾かおり
発表論文等1) 新出(2001) 平成13年度自給飼料品質評価研究会資料:21-28.
2) 新出ら(2002) 広島県立畜産技術センター研究報告13:(投稿中)

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