[成果情報名]

黒毛和種の子牛市場出荷時体重に対する母性遺伝効果の育種価と60日齢体重の関係

[要約]子牛市場出荷時体重から推定した母性遺伝効果の育種価と子牛の60日齢体重との間に有意な関係が認められ、子牛市場出荷時体重に対する母性遺伝効果の育種価は泌乳能力の指標となる。
[キーワード]育種、肉用牛、母性遺伝効果、泌乳能力、市場出荷時体重、60日齢体重、育種価
[担当]島根畜試・肉用牛科
[連絡先]0853-21-2631
[区分]近畿中国四国農業・畜産草地
[分類]科学・普及

[背景・ねらい]
 子牛の発育に影響を及ぼしている哺育能力、主として泌乳能力の改良は今後重要な課題である。子牛の60日齢程度までの増体量は母牛の泌乳能力の指標として有効であるが、60日齢の体重測定にはコストがかかり実用的に困難である。そこで、記録が得やすい子牛市場出荷時体重に対する母性遺伝効果の育種価の有用性について、子牛の60日齢体重との関係から検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 放牧が盛んな隠岐知夫里島で、2001年に市場へ出荷された子牛の皮下脂肪厚を超音波診断装置を用いて測定した。最小自乗分散分析の結果(表1)、皮下脂肪厚は放牧育成された11月市場の子牛が、舎飼経験のある3月、7月市場の子牛に比べて薄く、出荷前の飼養環境の差が小さいことが示唆される。
  2. 隠岐市場に1996年から2000年の間に出荷された子牛の体重記録を用いて母性遺伝効果の遺伝率と育種価をアニマルモデルにより推定した。分析モデルは表2に示すとおりで、母性遺伝効果、直接遺伝効果の遺伝率、遺伝相関は全記録を用いた場合0.20、0.20、0.20で、11月市場記録のみを用いた場合0.35、0.12、0.89である。
  3. 子牛市場出荷時体重に対する母性遺伝効果の育種価と子牛の60日齢体重の関係を図1図2に示した。全記録を用いた場合、両者の間の相関は0.33(P<0.01)、11月市場記録のみを用いた場合、両者の間の相関は0.57(P<0.001)でいずれも有意な関係が認められる。隠岐市場の出荷時体重に対する母性遺伝効果の育種価、特に11月市場記録から推定した母性遺伝効果の育種価は、泌乳能力の指標となる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 今後は市場出荷時データを蓄積することで母性遺伝効果の育種価の精度を向上し、泌乳能力向上を目指した交配計画の策定が必要である。

[具体的データ]

表1

表2

図1

図2


[その他]
研究課題名遊休農林地を活用した肉用牛生産技術
研究期間平成1998年〜2002年年度
研究担当者北村千寿、遠藤 治、森脇秀俊
発表論文等北村、遠藤、森脇(2022年)島根県立畜産試験場研究報告(第35号):9-12

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