[成果情報名]

センチピードグラスいもち病(新称)の発生とイネへの感染能

[要約] 滋賀県においてセンチピードグラス苗に紡錘形の病斑を呈する病害が発生した。病原菌は、Pyricularia oryzaeと同定されたので本病をセンチピードグラスいもち病と命名する。室内での接種試験では、本病原菌はイネに対して病原性が認められない。
[キーワード]センチピードグラス、畦畔管理、新病害、いもち病、Pyricularia oryzae
[担当]滋賀農総セ・農試・環境部・病害虫管理担当
[連絡先]電話0748-46-3081、電子メールs236403@pref.shiga.jp
[区分]近畿中国四国農業・生産環境(病害)
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 センチピードグラスは、雑草抑制を目的として植栽されるグラウンドカバープランツの一種である。現在、滋賀県の水田畦畔では20ha以上で植栽されている。2003年6月、本県内で、センチピードグラスのセル苗にいもち病と酷似した病害が発生したので、その原因を解明する。

[成果の内容・特徴]

  1. 病徴は、初め円形ないし楕円形で灰色の水浸状病斑が形成され、後に楕円形ないし長紡錘形で中央部が灰白色、周縁部が紫褐色の病斑となる(図1)。病勢が著しい場合は、葉の先端がねじれ、枯死することもある。
  2. センチピードグラスに発生した病斑から、同一種と考えられるPyricularia属菌が高い頻度で分離される。その病原性を接種試験により検討したところ、病斑を再現でき、かつ病斑から接種菌と同一と考えられるPyricularia属菌が再分離される。
  3. 本菌は、菌糸に隔壁があり、PDA培地上での菌叢ははじめ灰白色、後に褐色をおび中央部は黒褐色になる。分生子は無色で洋梨型、3個の細胞で構成され、着生基部に臍があり、大きさは平均28.3×9.8μmで分生子柄の先端に1から10数個が頂生する(図2)。これらはイネいもち病菌とほぼ一致する(表1)。
  4. 本菌のBeta-tubulin遺伝子断片のPCR-RFLP解析では、イネいもち病菌をはじめとする栽培植物寄生菌群と泳動パターンが一致する。rDNA-ITS2領域とBeta-tubulin遺伝子断片の塩基配列を決定し、既知のいもち病菌と比較すると、イネいもち病菌と100%の相同性を示し、栽培植物寄生菌群と高い相同性がある。これらの情報を基に系統樹を作成すると既知の栽培植物寄生菌群とクラスターを形成する。以上より本菌は、 Pyricularia oryzaeと同定できる(図3)。
  5. 本病は病原菌がPyricularia oryzaeであることから、センチピードグラスいもち病(Blast of Centipedegrass)と命名する。
  6. 実験室内での接種試験において、本病原菌はイネに病斑を形成しない。一方、イネいもち病菌はセンチピードグラスに病斑を形成しない。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本病害はセル苗でのみの確認である。

[具体的データ]





[その他]
研究課題名生態系を活用した病害虫管理技術の確立
予算区分県単
研究期間2002〜2004年度
研究担当者 冨家和典、湯浅和宏、森 真理、松浦一穂(滋賀県大)、m見明俊(滋賀県大)、中屋敷均(神戸大)、土佐幸雄(神戸大)、眞山滋志(神戸大)
発表論文等
1) 冨家(2003)平成15年度近中四地域問題別研究会(畦畔管理)講演資料
2) 冨家ら(2003)平成15年度日本植物病理学会関西部会講演要旨予稿集:42

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