[成果情報名]

Alternaria属菌による新しい病害「ポインセチア褐斑病」

[要約] 施設栽培ポインセチアの葉に多発した斑点性の障害は、国内未発生のAlternaria属菌による新病害であり、「褐斑病」を提案する。
[キーワード] ポインセチア、Alternaria属菌、新病害、褐斑病
[担当] 岡山農総セ・農試・病虫研究室
[連絡先] 0869-55-0543、kouji_inoue3@pref.okayama.lg.jp
[区分] 近畿中国四国農業・生産環境(病害虫)
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 岡山県南部の施設栽培ポインセチアの葉に斑点性の障害が多発したので、原因究明を行い対策に資する。
[ 成果の内容・特徴 ]
  1. 葉の症状は10月上旬頃から発生し、初め、径2〜3mm、円〜不整形、中心が淡褐色、周囲が茶褐色で、病斑の周辺部が黄緑色の小斑点を生じる。後に茶褐色、大型の不整形斑や葉脈沿いに拡大し、しばしば輪紋を呈する(図1)。多数の病斑が癒合して葉枯れを起こし、落葉することもある。苞の発病は少ない。
  2. 葉の病斑からはAlternaria属菌が高率に分離される。分離菌はいずれも有傷及び無傷接種でポインセチアの葉に黒褐色斑を生じ(表1)、しばしば落葉を引き起こす。病斑部からは接種菌と同一の菌が再分離される。
  3. 本菌はPDA培地上で気中菌糸の少ない灰ないし暗褐色を呈する菌叢で、分生子形成はごくまれである。5〜30℃で生育し、最適生育温度は25〜30℃である。
  4. 葉の病斑上における本菌の分生子柄は、単条、淡褐色、長さ70.0〜122.5μmでやや屈曲し、暗褐色、長棍棒状、大きさ30.5〜125.0×4.5〜23.5(平均95.4×16.2)μmで、0〜4個の縦隔壁、4〜11個の横隔壁、平均43.6×4.7μmの細長い単条のビークを有する分生子を単生、まれに数個鎖生する(図2)。以上の形態は、海外のポインセチアで報告されたAlternaria euphorbiae と類似するが、種名についてはさらに検討を要する。
  5. 以上の結果から、施設栽培ポインセチアの葉に多発した斑点性の障害は、国内未発生のAlternaria属菌による新病害で、「褐斑病」を提案する。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本病に対する登録薬剤はないので、病落葉の処分、施設内の湿度を低下させるとともに植物体を濡らさないなどの耕種的防除を行う。
  2. Alternaria alternataによる「苞枯病」は葉に発生しない点で本病と異なる。

[具体的データ]


[その他]
研究課題名 病害虫・生育障害の診断と対策指導
予算区分 県単
研究期間 平成15年度
研究担当者 井上幸次、伊東菜美子、那須英夫
発表等 井上ら(2004)日植病報 70:216(講要).

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