[成果情報名]

黒毛和種におけるヒト閉経期卵胞刺激ホルモンを用いた簡易な過剰排卵処理

[要約] ウシの過剰排卵処理においてヒト閉経期性腺刺激ホルモン(hMG)を1日2回のみ投与する処理方法は、一般的に利用されている卵胞刺激ホルモン(FSH)を用いた1日2回、3日間の漸減投与法と同等の胚回収成績が得られ、過剰排卵処理の簡易化が可能である。
[キーワード] ウシ、過剰排卵処理、hMG、簡易化
[担当] 岡山総畜セ・受精卵供給科
[連絡先] 電話 0867-27-3321
[区分] 近畿中国四国農業・畜産草地
[分類] 研究・参考

[背景・ねらい]
 ウシの過剰排卵処理(SOV)は、FSHを1日2回、数日間にわたり漸減投与する方法が主流となっている。しかし、この方法では牛に対するストレスが大きい上、複数回のホルモン投与による多大な人的労力も必要であり、処理の簡易化が求められている。そこで、ホルモン剤としてウシのSOVに有効であると報告されているhMGを用いて投与量及び投与回数を減らしたSOVの簡易化を検討する。
[成果の内容・特徴]
 
  1. 採胚までの処理(図1)は、膣内貯留型プロジェステロン製剤を用いて基準発情を誘起し、発情後10〜12日目に黄体を確認後、SOVを実施する。SOV開始3日目に、朝夕2回に分けてプロスタグランジンF2α製剤(PG、ジノプロストとして30mg)を投与して発情を誘起する。SOV開始5日目の夕方と6日目の朝に人工授精を実施し、SOV開始12日目に胚回収を行う。
  2. SOV(図2)は、hMG総量300IUを生理食塩水に溶解し、投与開始1日目の朝夕2回のみ150IUずつ投与する(hMG区)。また、一般的に行われているFSHを用いた漸減投与法は、FSH総量20AUを1日2回、3日間に分けて減量投与する(FSH区)。
  3. 黒毛和種経産牛16頭を用いて両処理法を1回ずつ反復実施し、胚回収成績を比較すると、平均推定黄体数、平均回収胚数、平均正常胚数すべてにおいて有意差はないものの、hMG区で良好な成績である。
[成果の活用面・留意点]
  1. 黒毛和種のSOVにおいて、hMGを用いた1日のみ朝夕2回投与法は、従来法に比べSOVの簡易化が可能であり、供卵牛へのストレス並びに人的労力の低減が図られる。
  2. hMGは、人体薬であるため、SOVに係る薬剤コストはやや増加する。
  3. hMGは、人体薬であるため、ポジティブリストの規定に留意する必要がある。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名 肉用牛広域後代検定事業
予算区分 単県
研究期間 2006〜2007年度
研究担当者 中原 仁、小田頼政、小田 亘

目次へ戻る