フザリウム培養ろ液を用いたイチゴ萎黄病抵抗性の簡易選抜

[要約]
フザリウム培養ろ液を添加したMS培地でイチゴのシュートを培養することによって、萎黄病抵抗性個体を早期に選抜することができ、イチゴの病害抵抗性育種の効率化が図れる。
   愛媛県農業試験場 作物育種室
    [連絡先]089-993-2020
    [部会名]生物工学
    [専門]育種 
    [対象]果菜類 
    [分類]研究

[背景・ねらい]

これまでイチゴの育種は省力化のための大果性や品質・収量面が重視されてきた。近年、防除の省力化や安全性の面から病害抵抗性が重視されており、特に萎黄病、うどんこ病、炭そ病に対する抵抗性品種の育成が求められている。しかし、抵抗性個体の簡便な選抜法が確立されていないことが、抵抗性品種の育成を困難なものにしている。
そこで、萎黄病の病原菌であるフザリウムの培養ろ液を用いて、萎黄病抵抗性個体を選抜する方法について検討した。

[成果の内容・特徴]
  1. とよのか発病株から分離したフザリウム(Fo1菌株)をMS液体培地で6週間振とう培養した後、4,000rpmで30分間遠心し、上清を0.2μmのフィルターでろ過減菌したものをフザリウム培養ろ液とする。
  2. 作成した培養ろ液を添加したMS培地で展開葉2〜3枚のイチゴのシュートを培養することによって、シュートからの発根が阻害される。培養ろ液による発根阻害の程度は、萎黄病抵抗性の強い芳玉と弱い宝交早生で異なり、抵抗性品種を識別することができる(表1)。
  3. 現在栽培されている品種のシュートをろ液添加培地で培養すると、抵抗性品種(芳玉、はつくに)では発根阻害が小さく、抵抗性品種を識別することができる(表2)。
  4. 芳玉×宝交早生の実生シュートをろ液添加培地で選抜し、選抜個体にフザリウム(女峰発病株から分離したF2菌株)を摂取し萎黄病抵抗性を検定した結果、健全株率は32.4%であり、対照区の14.0%に比べて高く、萎黄病抵抗性個体を選抜することができる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 萎黄病抵抗性の育種において、抵抗性個体の初期選抜に利用できる。
  2. 選抜された個体すべてが萎黄病抵抗性ではないため、接種試験等と組み合わせて実施する必要がある。

 [その他]
 
研究課題名:培養苗の順化率の向上と保存技術による計面的種苗生産システムの開発
予算区分   :地域バイテク
研究期間   :平成7年度(平成3年〜7年)
研究担当者:松澤光
発表輪文等:第59回育種学会四国国談話会
 
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