ニンジンに含まれる前駆脂肪細胞の分化調節成分

[要約]

ニンジン抽出物は通常培地とインスリン添加培地においては前駆脂肪綱胞の分化促進作用を示すが、デキサメタゾン等添加培地では分化阻害作用を示す。活性成分はβ−カテロンであり両作用を示す。他のカロテノイドも分化を促進する作用がある。
四国農業試験場・作物開発部・品質評価研究室
[連絡先]0877-62-0800
[部会名]食品
[専門]食品加工
[対象]
[分類]研究

[背景・ねらい]

近年、食品の持つ健康機能性に対する関心が高まり、その有効成分の解明が進められている。成人病の中でも糖尿病や高脂血症は脂肪細胞の機能の不全がその原因のひとつであることが知られている。脂肪細胞はその前駆細胞より分化してでき、分化調節物質は脂肪細胞の機能を調節し上記疾患にも影響を与えることが知られている。
そこで、この分化に注目し、地域農作物の検索を行ったところニンジンに活性を認めたので、活性成分を解明することにした。

[成果の内容・特徴]
  1. ニンジン抽出物の中でも疎水性の強い画分に通常培地とインスリン添加培地においては分化促進作用を、デキサメタゾンとメチルイソブチルキサンチンとインスリン(DMI)の3種類の試薬を添加した培地では分化阻害作用を見いだした。活性を指標に有効成分を精製したところ活性成分はβ−カロテンであった。
  2. β−カロテンについては既に分化阻害作用が報告されているが、この阻害作用はDMI添加培地の条件下での現象であり、通常培地やインスリン添加培地においては分化の指標となるグリセロール−3−リン酸脱水素酵素(GPDH)活性を上昇させ、逆に分化を促進させる(図12)。
  3. 他のカロテノイド(10μM)についても検討したところ、インスリン添加培地においてβ−カロテンと同様にGPDH 活性を上昇させ分化促進作用を示し、同じく分化の指標である細胞内トリアシルグリセロール(油滴)の蓄積量も増加させる(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. β−カロテンに従来の報告とは異なり分化促進作用のあることがわかった。
  2. ビタミンAに変換しないカロテノイドにも分化調節活性があることより、分化調節作用はビタミンAとしての作用とは異なると考えられる。
  3. 摂取した際の生体内での効果は検討する必要がある。

 [その他]
 
研究課題名:農産物の健康機能性の評価
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成7〜9年度)
研究担当者:関谷敬三
発表論文等:1)3T3−L1前駆脂肪細胞の分化に対するカロテノイドの影響の再評価、日本農芸化学会誌、70、講演要旨集(1996)
        2)野菜抽出物による前駆脂肪細胞分化の綱節、日本肥満学会講演要旨集、(1996)
 
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