べたがけ被覆による早期水稲の平置き省力育苗法

[要約]
 
早期水稲ハウス内育苗において、播種後育苗箱を平置きし緑化終了までべたがけ被覆を行う省力的な育苗法を確立した。なお、べたがけ被覆は出芽苗の緑化や硬化期の保温にも活用できる。
高知県農業技術センター・作物園芸部・水田作物科
[連絡先]088-863-4916
[部会名]水田・畑作
[専門]栽培
[対象]稲類
[分類]普及

[背景・ねらい]

水稲早期栽培で一般的に行われている自家育苗は、ハウス内でトンネル被覆を行って保温するため、支柱の設置が必要で苗箱の配置作業も煩雑である。また、播種作業からの数回に及ぶ運搬、積み替え作業も重労働である。そこで、簡易な保温技術として注目されているべたがけ被覆育苗における、資材の違いや被覆期間が苗に与える影響を明らかにし、早期水稲の低温期のハウス育苗に活用できるべたがけ被覆による省力平置き育苗法の確立を図る。

[成果の内容・特徴]
  1. 本育苗法では、播種してハウス内へ育苗箱を配置した後は、移植のための搬出まで育苗箱を運搬する必要がない(図1)。
  2. 種子の催芽は加温式の催芽器を用いて、1mm程度に芽出しを揃えて播種する。播種時のかん水を充分に行うと被覆除去時までかん水は必要ない。なお、覆土は持ち上がりを防ぐため粒状培土を用いる。
  3. 播種直後から緑化終了まで連続してべたがけする(図2)。使用する被覆資材は、被覆内が高温になりにくく、夜間の保温効果の高いシルバーラブ(シルバーポリトウ#90と不織布のラブシートの2枚重ねの被覆資材)が最も適する(表1)。
  4. 被覆期間は、稚苗(播種量・乾籾160g/箱)では、草丈5〜6cm、葉齢1葉の時期まで(図3表2)、中苗(同100g/箱)では草丈2〜3cmの時期までとする(表2)。播種後の被覆日数はおおむね、2月下旬〜3月上旬播き中苗で5日間、3月上旬播き稚苗で8日間である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 早期水稲のハウス育苗における省力化、低コスト化が図られ、規模拡大による苗箱の増加にも対応できる。
  2. べたがけ被覆は、加温育苗器を利用した出芽苗の緑化や、硬化期の夜間に低温が予想される場合の保温対策としても有効である。
  3. 被覆中の高温障害回避のため、ハウス内の気温は30℃以上にならないよう換気に注意する。
  4. 被覆除去が遅れると徒長苗や高温障害の発生するおそれがある。

 [その他]
 
研究課題名:水稲の経営規模拡大に伴う安定生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:平成11年度(平成6年〜10年)
研究担当者:山崎幸重
発表論文等:べたがけ被覆による平置き育苗法での被覆資材の違いが苗の生育に及ぼす影響,日作四国支報,第36号
 
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