大豆イソフラボンによる血中中性脂肪の低下とリポプロテインリパーゼ活性の上昇
[要約]
更年期障害
モデルである
卵巣摘除ラット
に
イソフラボン
を投与すると
体重
と
血中中性脂肪
の増加が抑制される。そのメカニズムとして培養細胞では
イソフラボン
により中性脂肪を分解する
リポプロテインリパーゼ
の活性の上昇が認められる。
四国農業試験場・作物開発部・品質評価研究室 [連絡先]0877-62-0800 [部会名]食品 [専門]食品品質 [対象]豆類 [分類] 研究
[背景・ねらい]
大豆は栄養的に優れた特徴を持つ作物であるが、一方では漢方薬、民間伝承薬としても古くから用いられている。最近では血中コレステロールの低下、抗酸化作用、乳ガン細胞の増殖阻害などの機能性が知られてるようになってきた。本研究は大豆の機能性成分の中でもイソフラボンを取り上げその機能性を明らかにすることを目的としている。イソフラボンは弱い女性ホルモン様作用を示すことから、その作用を利用した生理機能性の開発が期待されている。今回、女性ホルモン低下による更年期障害モデルである卵巣摘除ラット及び培養細胞を用いてイソフラボンの作用を検討した。
[成果の内容・特徴]
卵巣摘除ラットを作成し、イソフラボン添加餌(0.03%)を与えて36日間飼育した。
その間、イソフラボンを与えない卵巣摘除群は対照群より体重が増加し、更年期障害の症状を示す(
図1
)。
イソフラボンを与えない卵巣摘除群の体重増加はイソフラボンを投与することで低下する。一方、対照群はイソフラボンを投与しても体重の変化は示さない(
図1
)。
イソフラボンを与えない卵巣摘除群の血中中性脂肪はイソフラボンを投与することで有意に低下する(
図2
)。
培養前駆脂肪細胞にイソフラボンのダイゼインを添加すると中性脂肪を分解するリポプロテインリパーゼ活性が上昇する(
図3
)。その時、リポプロテインリパーゼのmRNAの増加も認められる(
図4
)。このことより、イソフラボン投与卵巣摘除ラット群での血中中性脂肪の低下のメカニズムは脂肪細胞などでのリポプロテインリパーゼの合成分泌の上昇によることが示唆される。
[成果の活用面・留意点]
イソフラボンの形態、投与量などを検討する必要がある。
ヒトでの効果は別に検討する必要がある。
白糠への異物の混入に留意する。
[その他]
研究課題名:
大豆イソフラボンの糖・脂質代謝活性化作用の解明
予算区分:作物対応研究(転作作物)
研究期間:平成11年度(平成11〜13年)
研究担当者:関谷敬三
発表論文等:
Adipose differentiation of 3T3-L1 cells by soybean isoflavones. 第3回慢性疾患の予防治療における大豆の役割に関する国際シンポジウム、要旨集、50-51、(1999)
目次へ戻る