知的財産に関する基本方針

はじめに

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下「農研機構」という。)は平成18年4月から始まる新たな中期計画に示された農研機構の使命を踏まえ、中長期的観点から知的財産の創造、管理、活用に関する基本的な考えを「知的財産に関する基本方針」としてとりまとめ、内部研究者の共通認識とする。 なお、農研機構で取り扱う知的財産権は、特許権、育成者権、実用新案権、著作権(プログラム及びデータベースに限る。)、商標権、意匠権、回線配置利用権及びこれら権利に関連した技術情報(以下、これらを「知的財産権」と総称する。)とする。

1 知的財産の権利化についての基本的考え方

農研機構は、農業、食品産業に関する技術開発を行う公的研究機関であることから、研究成果を効率的かつ効果的に社会に普及することが最も重要である。研究成果の普及については、大別すると、

  1. 権利化をし、許諾先の企業活動を通じて普及を図る方法
  2. 権利化を行わず、論文発表し、公立の試験研究機関や普及組織を通じて普及する方法

とがあることから、以下の基準に従って判断するものとする。

(1)権利化を行う場合

1.商品化が期待される研究成果の権利化

企業等において商品化が期待される研究成果については、権利化を推進し、許諾先の企業等による経済活動を通して成果の活用を促進することを原則とする。 このことにより実施料収入による知的創造サイクルへの貢献、開発技術に対する認知度・評価の向上及び研究者の意欲の向上等も期待される。

2.植物新品種の権利化

従来にない特性を有する植物新品種及び育種素材として優れた遺伝特性を有する中間母本については、育成者権を国内農業の振興に有効活用するとともに優良新品種の安定的生産・普及を図るため、積極的に権利化を進めるものとする。

3.技術の独占を防止するための権利化

農研機構が研究成果を権利化しないことによって、第三者が権利化し、農業現場や産業界への技術の普及が妨げられるおそれが強い場合等にあっては、商品化の可能性にかかわらず権利化を図ることとする。

4.外国での権利化

外国への特許出願については、商品化の可能性が特に高い発明について、費用対効果を考慮した上で、権利化を進めるものとする。 近年、我が国が開発した品種が海外で増殖され不法に我が国へ輸入される事例が増加している。 外国への品種登録出願については、このような事態をふまえ、海外で利用される可能性や国内農業への影響を考慮した上で、権利化を進めるものとする。

5.商標の権利化

標権については、農研機構の研究成果名を用いた粗悪な類似商品等が流通することを防止するとともに研究成果の品質を保証し、普及を促進する上で必要性が高いと考えられる場合について登録を行うものとする。

(2)権利化を行わない場合

1.社会全体で成果を共有すべき技術

農業現場で経験的に取り組みが進んでいる技術の科学的解明やその技術の改良に関する研究成果については、対象事業者である農業者等が零細かつ多数であることが多く、このような場合には、研究成果を社会全体で共有するとの考え方に立つことが適切である。 こうした研究成果は、権利化を行わず論文等で公表し、公立の試験研究機関や普及組織を通じて普及を行うことにより活用を促進するものとする。

2.利用範囲が極めて限定的な技術

研究所の研究者のみが利用する等、利用範囲が極めて限定的である研究成果は、原則として、権利化を行わないこととする。

2 知的財産権の活用及び管理

農研機構の保有する知的財産権は単なる権利の保有にとどまるのでは意味がなく、幅広く活用されることにより初めて社会貢献を果たすこととなる。 また、農研機構の社会的評価及び知的創造サイクルの構築等の観点からも、以下に即して積極的な活用と適切な管理を行う。 なお、農研機構は、研究成果の活用をより効率的・効果的に促進するため知的財産権を機関帰属とする。

1.TLO(技術移転機関)との連携

農研機構の保有する特許権等の幅広い分野における有効な活用の可能性を追求するため、TLOとの連携強化を進めるものとする。 特に、農研機構の単独特許については、TLOに対して積極的に再実施権許諾の権限を付与し、活用の促進を図ることを原則とする。

2.効果的な実施許諾

知的財産権については、農研機構が公的研究機関としての立場にあることから、原則として、通常実施権の許諾を行うものとする。その場合、許諾の対価については、研究成果の活用促進の観点から許諾の案件ごとに許諾先と協議の上、決定する。 なお、保有する知的財産権の有効活用が促進され、かつ、公益性、公平性の観点から見て問題がないと判断される場合には、実施者の意欲を高めるため、一定期間、独占的実施権を付与することができるものとする。 植物新品種のうち、食料の安定供給や農業の持続的発展の観点から重要で公益性の高いものについては、実施者の負担軽減と幅広い事業者の利用を最も重視して許諾先や許諾料の決定を行うものとする。

3.共同研究

産業への利用を目的とする技術開発等は、企業等との共同研究を行うことが有効であり、研究成果は知的財産として共有することを基本として産学官の積極的な連携を進めるものとする。 また、農研機構は、実施部門を有しない公的研究機関であり、共同研究の成果を活用するためには、知的財産権の共有権利保有者の協力の下に研究成果の実施を行わなければならない。 このため、共有権利保有者がその技術を実施する場合には、農研機構の持ち分相当の実施料を農研機構に支払うこと、また、自ら実施しない場合には、第三者への許諾を認めることを内容とする契約を結ぶことを基本とする。 なお、共有権利保有者に対しては、権利の確保までの貢献を評価し、その活用を促進する観点から、一定期間、独占的実施権の付与を行うことができるものとする。

4.知的財産権の維持及び放棄

権利化された知的財産権については、社会的貢献及び経費の効果的利用の観点から、実施状況等を勘案して権利を維持すべきか、放棄すべきかの判断を行うものとする。このため、維持費を必要とする権利については、知的財産センター(注)が中心となり、発明者、所属の審査会及びTLO等と連携して定期的に見直しを行う。

3 知的財産に関する取組みの強化

権利化が適当と判断される場合には、農研機構の社会的評価の向上や知的創造サイクルの実現の観点から、農研機構としての組織的支援や研究者の意識向上を通じて、権利化の促進に積極的に取り組むものとする。 また、農業者等による産地レベルでの特許取得、地域団体商標による産地保護、地域内の営業秘密の保護などによる産地の差別化等の取り組みを支援する。

1.知的財産センター(注)の設置と充実

知的財産の創造、管理、活用を促進するため、農研機構内に知的財産センター(注)を配置し、知的財産に関する業務の集中化を図るとともに、研究成果の事業化の可能性を的確に見極めるTLOとの連携に努め、知的財産センター(注)の機能の充実を進めるものとする。 また、研究者に対しては、研修等により知的財産制度の意義と内容の啓発に努める。

2.侵害対策委員会

権利保護を実効あるものにするため、侵害行為に対しては農研機構内の侵害対策委員会を通じて警告、差し止め訴訟の提起等適切な対応を行う。

3.研究所の役割

権利化に対する適切な判断を行うため、各研究所に知的財産担当責任者を配置し、研究の企画・推進段階から発明になるまでの管理・指導を行う。 また、知的財産の創造、管理、活用を促進するため、研究者への補償金制度の周知、業績評価への反映を行う。

4.研究者の努力

農研機構に所属する研究者及び研究管理者は、研究開発の企画、推進の段階から研究成果の活用について具体的な目標を持ち、知的財産権の確保を意識した研究を推進するものとする。 また、研究者は公的研究機関における責務の一環として、国民の共有財産としての知的財産権の確保とその実施による社会発展への寄与を自覚し、研究成果の権利化と活用に取り組む必要がある。 さらに、個人の判断で論文発表を先行させたり、共同出願契約を結ばずに共同研究成果の出願を行うなど、知的財産権の確保や活用の方針に反することのないよう、研究者等は知的財産制度の内容の理解に努める。

 

(注) 平成23年4月より知的財産センターを含む情報広報部は、連携普及企画室、連携広報センター、知財・連携調整課及び情報システム課からなる連携普及部に拡充改組されました。知的財産の権利化、維持、管理等の業務は知財・連携調整課が、特許等の活用促進等の業務は連携広報センターが担当しています。詳しくは連携普及企画室までお問い合わせください。(電話 029-838-8462)